「本当の危機」を見えなくさせる
野党側「反対キャンペーン」の害毒

現実に女性たちの憲法に関する意識はどうなっているだろうか。各種世論調査を見ると、男性よりも女性のほうが憲法改正に消極的である。

「美しい憲法の会」の世話人の一人で政治評論家の細川珠生氏は、彼女と同年代の女性たちの多くは日常生活の中で憲法改正のことなどほとんど考えていないと語る。

櫻井よしこ(さくらい・よしこ)ベトナム生まれ。ハワイ州立大学歴史学部卒業。「クリスチャン・サイエンス・モニター」紙東京支局員、アジア新聞財団「DEPTH NEWS」記者、同東京支局長、日本テレビ・ニュースキャスターを経て、現在はフリー・ジャーナリスト。
1995年に『エイズ犯罪 血友病患者の悲劇』(中公文庫)で第26回大宅壮一ノンフィクション賞、1998年には『日本の危機』(新潮文庫)などで第46回菊池寛賞を受賞。
2007年「国家基本問題研究所」を設立し理事長に就任。2011年、日本再生へ向けた精力的な言論活動が高く評価され、第26回正論大賞受賞。2011年、民間憲法臨調代表に就任。
著書に最新刊『戦後七〇年 国家の岐路 ー 論戦2015』(ダイヤモンド社)、『「正義」の嘘』(花田紀凱氏との共著)『日本人のための憲法改正Q&A』(以上、産経新聞出版)、『日本の敵』(新潮社)、『日本人に生まれて良かった』(悟空出版)など多数。

「私は子どもがいま小学校高学年です。同級生のママたちは40代の方たちが多く、私たちの世代はバブルの時代に大学時代を過ごしています。日本は豊かで就職も売り手市場でした。世の中の事柄にあまり関心も問題意識も持たずにいても、比較的恵まれたまま過ごすことができた世代です。したがって、戦後の日本のあり方について考える必要も、ある意味、ありませんでした。十分満たされていたわけですから、日本の現状を変えるなどという発想には、なかなかなりません」

事実、安倍晋三首相が2014年7月1日に、集団的自衛権の限定的行使を容認する閣議決定を行ったとき、彼女の周りの友人たちの間では、なぜ安倍首相はあんなことをするのかと批判する声が圧倒的に多かったという。

「集団的自衛権の部分的行使が、自分の子どもたちが徴兵され戦争に行かされることに直結すると信じている人は少なくありません。戦争に行くための法案だという野党の言葉をそのまま信じているわけです。なんと言っても野党側の反対キャンペーンは凄まじいですから。マスコミも同じです」

戦争に突き進んでいくという類のレッテル貼りそのものの報道が溢れる一方で、日本の国防や安全保障がどれほど手薄で欠陥だらけかという肝心の情報は伝えられない。

そうした中で、普段、国防や安全保障に関して考えることをしてこなかった女性たちの無意識の世界に、「戦争をするための閣議決定だ」というキャンペーンはスーッと浸透していくというのである。