イオンのドラッグ事業が大きな動きを見せる。ショッピングセンター(SC)ではクリニック併設による医療モール展開を拡大するほか、在宅医療の受け皿となる医療ネットワークの基盤構築へ向け、包括提携している三菱商事との具体的な協業も動き出す。

 協業の項目は、1.調剤サービスの質・量の拡充と医薬品流通の効率化、2.医療・健康を軸とした新しい商品・サービスの開発と新業態店舗の開発・展開、3.医薬品におけるノンストア事業、4.介護支援事業の展開、5.地域医療の充実に向けた地域医療機関とのネットワークの構築、の5分野。各々が進めてきたドラッグ・医療関連事業について情報を共有し、今後の協業項目を絞り込んだ。

 医薬品の流通効率化では、医療用医薬品の分野において、新薬のみならず、ジェネリック医薬品(GE)を含む医薬品全体の効率化に着手する。とくに製薬企業を巻き込んだ物流改革を進め、医療用医薬品分野のサプライチェーンマネジメントを推進する。

 大型新薬が相次いで特許切れを迎える、いわゆる2010年問題を背景に、新薬メーカーでも事業再編と効率化の動きには関心が高く、「数社の製薬企業に方針を伝えたが、好意的に受け止めてもらっている」(イオン・佐藤京子ドラッグ事業最高経営責任者)と言う。

 三菱商事は、製薬企業に対する原材料供給で事業展開しており、医薬品流通効率化への情報提供を行う。

 新商品・サービス開発と新業態店舗開発では、まずはイオンが展開するSC内での医療モールの展開を拡大する。これまでイオンが展開してきた調剤薬局の多くが、物販売場を基軸に配置され、結果、関連性の高い、ヘルス&ビューティケアゾーンに併設する調剤薬局だった。SCでの医療モール展開を拡大し、各モール内に複数の診療科を誘致することで、調剤事業のベースとなる処方せん獲得を促進する。SC運営にとっても、衣料品テナントなどから転換することで、SC自体の機能転換、機能拡大を図るとしている。医療モール内への診療科の誘致に関しては、三菱商事のサポートを受ける。

 現在、複数の診療科を持つSCは5カ所。11年2月期には既存SCの改装を含め、新規で5SCに医療モールを展開、当期末10医療モールの展開を予定する。

 また、この分野ではプライベートブランド(PB)「ハピコム」での第1類医薬品の開発を進め、グループ内での商品競争力を高める。すでに製薬企業5社と調整しており、薬効ごとに商品開発、ハピコムとしてトータルで訴求する。

 08年12月に包括業務提携契約を締結したイオンと三菱商事。すでに両社の間では、09年4月にオープンした「モゾ・ワンダーシティ」(愛知県名古屋市)などのショッピングセンター(SC)開発・運営をはじめ、海外からの商品・原材料調達など、包括業務提携での協業を徐々に拡大してきていた。

 今年1月19日に開催した、両社役員で構成する提携委員会での合意をもとに、ドラッグ事業での具体的な5分野での協業を進めることとなった。グループ事業含め、イオンの動きに注目だ。


診療科が入居するイオンSCは300カ所。改装などによって徐々に医療モールを拡大する

 

「ドラッグストアニュース」4月号 好評発売中!

 日本の薬剤師の存在理由とはどのようなものなのでしょうか。第1特集は、今回で第5回目となる全国ドラッグ&調剤薬剤師実態調査。改正薬事法施行後の薬剤師の仕事に対する取り組みの変化とともに、大学や企業の薬剤師育成、店舗での薬剤師の動きを特集します。
注目の第2特集は、成熟社会の到来にあたり、あらためて店舗現場のニーズが高まっているコミュニケーションについて、言葉の観点から特集します。たとえば「じくじく」「きりきり」といった個人の症状の感覚をどのように的確に把握し、来店客に納得してご購入いただくか、各方面での取り組みを紹介します。
また、前回に続き2号にわたって、全世界でヘルス&ビューティケアビジネスを展開する有力企業、英国DgSブーツのレポート(後編)をお届けします。直営と合弁で3000店舗、フランチャイズ展開を含めると全世界で6000店舗を展開するブーツ。日本から一度は撤退したこの企業が、再び日本へやってくる日が近づいています。ブーツの最新情報をお届けします。
さらに、調査レポートとして、今回は主要ドラッグストア5社のショッピングサイトを比較しました。取扱商品や推奨方法など、各社の特徴を比較分析することで、企業戦略が見えてきます。
今回も盛りだくさんな内容でお届けする「ドラッグストアニュース」をご覧ください。
購読のお申し込みはこちらから