『フォーブス』誌発行人を務め、連続起業家でもあるリッチ・カールガードは「成功し続ける企業」の5つの条件を、ウォール街からシリコンバレーまで全米企業への徹底取材から明らかにした。本連載は『グレートカンパニー――優れた経営者が数字よりも大切にしている5つの条件』からそのエッセンスを紹介する。第11回のテーマは「F1にマネジメントの真髄を学ぶ?」だ。

F1はレース中にも膨大なデータを分析することで、各チームは0.01秒でも差をつけようとしている。多種多様なデータと、搭乗するレーサーの感覚――ときに相反する両者をどうマネジメントするのか。

 データを信じるのか、レーサーを信じるのか

 私は2013年の終わりに、テキサス州オースティンで行われたF1グランプリでカルテンボーン(ザウバーCEO)に会った。

 私が興味を惹かれたのは、F1チームがいかにテクノロジーを駆使して車を──数百万ドルする新車を、シーズンごとに──設計しているかという点だった。レース中の調整にデータが果たす役割についても目を見はった。

 ザウバーのF1レースカーに使われる小さな2.4リッター8気筒エンジンは、1分間に最高1万8000回転にまで達する。エンジンは壊れるぎりぎりのところに常にあり、そのためリアルタイムでデータを得ることが不可欠なのだ。

 これはタイヤの選択、温度、空気圧、サスペンション調整、ウィング調整など、パワーを生み出したり、路面に触れたり、風をはねのけたりするあらゆる部分でも同様である。各グランプリのレースコースや天候によっては、変わりやすさはいよいよ増す。

すべてのトラック、すべての天候に対して最適な調整の組み合わせがあるが、調整を要するものの組み合わせパターンは膨大で、どんな人であれ最適にすることはおよそ不可能だ。そのため、センサーやコンピュータや分析がF1チームにとって不可欠になっている。

 このことについて元F1ドライバーは次のように説明した。

「たとえば私が一周ごとにターン4で0.2秒ずつ遅れていることをデータが示しているとしよう。その情報はピットチームから無線で送られ、私のイヤホンに届く。誰もがそのことを知っている。ではどう対応するのが適切か。ターン4で0.2秒速くなるよう私は努力すべきなのか。いや、それはできない。なぜなら、私の指先と、つま先と、経験と勘、そのすべてが、すでに私が限界に達していることを告げているからだ」

では誰が、あるいは何が、1周ごとに失われた0.2秒に対して責任を負うのだろう。