津田 うん、それってロジックツリーの話と同じなんですよ。
いくら理詰めでロジックツリーをつくって場合分けをしていっても、それって言ってみれば「設計図」みたいなものなんですよ。そこから「自分の答え」を探すときには、論理からはみ出る部分、つまり「直感」が必要になるから、最終的なアウトプットの質はどうなるかわからない。
石井 なるほど、よくできているネタというのは、ロジックツリーがよくできている状態なんだけど、結局は「直感」の部分があるから、ウケるかどうかはやってみないとわからない、と。
私がふだん「自分がやっていて楽しいか」「自然に感情が乗るか」がカギだと思っている部分です。
津田 別のメーカーの人が言っていて印象的だったのは、職人がつくる設計図というのは、その職人自身の「手の器用さ」を反映したものになっている、という話だね。
だから、たとえばナイツのネタは、やっぱりナイツがやったときがいちばん面白くなるように設計されているのかもしれない。
石井 そうなんですよ、キャラクターとか間(ま)とか声色とか表情とか感情とか……。たぶんほかの誰かが同じ台本でマネしてみても、あそこには届かないと私は思いますね。
「いるだけで面白い芸人」はブランドが確立されている
津田 でも一方で、ネタ以前に「なんかそこにいるだけで面白い」っていう芸人さんもいたりするじゃない? ああいう人についてはどう考える?
石井 そういう人はもう、もう「何か」があって売れて、みんなが知っている人なんですよ。
商品のプロモーションとかマーケティングの話と一緒で、たぶん私たちの心理というのは、知っているか知らないかという「認知」の部分にものすごく左右されるじゃないですか。「あ、この芸人、前にテレビで見た!」という認知があるだけで、お客さんの警戒感が解かれて笑いやすくなりますよね。
だから、知っているAが出てくるのと、知らないBが出てくるのって、同じネタをやったとしても、みんなが見たいって思うのはAのほうなんですよね。
津田 たしかに出てきた瞬間に、なんかこちらが笑わなきゃいけない気分になる芸人さんっているもんね。
あと、これもテレビプロデューサーの友人から聞いた話だけど、「みんな年をとってくるとちょっと面白くなる」と言っていたのを思い出した。これって結局、視聴者側の「認知」が高まった結果だと言えるかもしれない。