すべての「クリエイティブ」は「何かのパクリ」から始まる
津田 今回の本(『あの人はなぜ、東大卒に勝てるのか』)は「考える」ことが大事だっていう話だったんだけど、お笑いの世界について言えば、逆に「学ぶ」ことも必要かもしれないですね。
石井 ああ、それは私も人から言われたことがあります。「もっと落語とか漫才からパクればいいんじゃないの?」って。
津田 「パクる」というと聞こえはよくないけど、「学ぶ」というのは「真似ぶ」ですからね。
石井 東京オリンピックのエンブレムのデザイン盗作疑惑がニュースになったこともあって、知的財産まわりの話ってけっこうセンシティブなところがありますけど……。
ただ、やっぱり過去のものから「笑いのエッセンス」を取り出して自分のネタに生かすということは、私も含めてほとんどの芸人さんがごく普通にやっていることなんじゃないですかね。
津田 音楽の世界だって、コード進行を他の曲から持ってきたりということは当たり前でしょうからね。
石井 エンブレム問題が出てきたときに、ナインティナインの岡村さんがラジオで「お笑いやバラエティーはすべてのパターンが出尽くしていて、それをみんなバレないようにうまいこと取り入れてる」と言っていたのが印象的でした。
あと、やっぱり芸人で面白い人って、ずっとお笑いを超見てきた人なんですよ。それは間違いないですね。ですから、お笑いもやっぱり「学ぶ」から入るんだと思います。
津田 うんうん、それは正しいと思うな。僕が博報堂に入った当時、松田聖子さんが資生堂のCMソングになった「裸足の季節」という曲でデビューしたんですよ。
そのCMのクリエイティブディレクターをやっていた人に「どうして松田聖子さんを起用したんですか?」って聞いたんです。そうしたらその人は、「彼女はものまねがうまくてね」って言っていましたね。当時の彼女はやたらといろんな歌手のまねをしていたんだって。
石井 そういう意味では、「学ぶ」と「考える」って別のことでありながらも、やっぱり学ぶことで考えるための筋肉が鍛えられるというか、学習によって思考力が蓄えられる部分もあるということは言えそうですね。
——「考える」ことの大切さから議論が始まったはずなんですが、「学ぶ」ことも大事だという結論に急展開していったあたりが面白かったです。本日はお2人ともありがとうございました!