これからはロールプレイング力の時代
【藤原】僕は津田さんの言う「考える力」を「情報編集力」と呼んでいて、それを5つの要素に分けています。
1. コミュニケーション能力
2. ロジカルシンキング能力
3. シミュレーション能力
4. ロールプレイング能力
5. プレゼンテーション能力
東京大学法学部、および、カリフォルニア大学バークレー校経営大学院(MBA)卒業。
博報堂、ボストン コンサルティング グループなどで一貫して新商品開発、ブランディングを含むマーケティング戦略の立案・実行にあたる。
現在、AUGUST-A株式会社代表として、各社のコンサルティング業務に従事。また、アカデミーヒルズや大手企業内の研修において、論理思考・戦略思考の講座を多数担当。表層的なツール解説に終始することなく、ごくシンプルな言葉で思考の本質に迫る研修スタイルに定評があり、のべ1万人以上の指導実績を持つ。
著書に『あの人はなぜ、東大卒に勝てるのか』『世界一わかりやすいロジカルシンキングの授業』などがある。
【津田】(4)のロールプレイング能力というのは、たとえば勉強したり暗記したりではなく、役割の中で思考するということですか?
【藤原】そうそう。社会的な役割を演じ分けて、演じる中で考えましょうという……。たとえば編集者だったら、読者のロールプレイができなきゃダメだし、営業マンだったら顧客のロールプレイができなきゃダメでしょう。
あと、(5)のプレゼンテーション能力についていうと、学校で音楽、技術、体育を教えているでしょう。小学校のときはベートーベンとモーツァルトの違いを教えてもいいと思うけど、高校ぐらいになったらこういう実技教科はすべて「プレゼン技術」として教えればいいんじゃないかと思っているんです。
自分の思いをどう身体で表現するかというダンスや、自分のイメージをどう絵にできるのかという美術、手先で自分の思ったような形をつくり出す技術とか。
極端な話、僕は高校の教科を「情報編集力を鍛える5つの教科(リテラシー)」に替えちゃったほうがいいんじゃないかって思うくらいなんですよ。
【津田】なるほど! 面白いですね。僕もロールプレイング力って、すごく大事だと思うんです。
歴史を学ぶときにも、たとえば、家康は秀忠に江戸城を譲ってから駿府に行きました、と。「でも、なんで駿府なの? それを家康の気持ちになって考えましょう」っていうのも、一種のロールプレイングですよね。
「歴史=人間」ですから、歴史の授業なんかも、そういうふうに切り替えていくべきかもしれませんよね。
【藤原】そこまでできる教師がなかなかいないのが実情ですけどね。あと、本当は僕らがもっと知らないといけないのは日本の近代。「どうしてあの戦争を始め、どうして負けたか?」です。
【津田】まったくおっしゃる通りだと思います。
【藤原】どうして負けたかについてちゃんと教えられる先生がいないから、結局みんな日本の近代を学んでいない。でも本当は、少なくとも太平洋戦争については、「どの時点だったら引けたのか?」ということを、ロールプレイをしながら学んでみるべきだと思うんです。負けた側としてね。
【津田】ビスマルクの「問題は演説や多数決ではなく、鉄と血によって解決される」っていう有名な言葉あるんじゃないですか。あれは言葉としてはみんな知っているけれど、いったい何をすることなのかわかっていないですよね。だからおっしゃるとおり、歴史のロールプレイは大切だと思いますね。