共通点は、「難しい概念を水で戻す」こと

入山 それにしても、『もしドラ』から『もしイノ』の発売まで6年も経っていますよね。出版の「続編」にしては間が長いほうではないですか?

岩崎 そうですね。たしかに続編はあまり間を空けないほうがいいものですが、続編を書こうと腹を決めた昨年(2014年)初頭、すでに『もしドラ』の発売から4年経っていました。なかなか厳しい状況だな、と思いましたよ。「いまさら? どうせ岩崎の貯金が尽きたから二匹目のドジョウを狙ったんだろう」と思われるに違いない、と(笑)。だからこそ、おもしろいと思ったんです。

入山 ええっ? 岩崎さんもやはり「おもしろい」、ですか。

岩崎 そうなんです。なぜかというと、「逆境でのチャレンジ」になりますからね。1~2年程度スパンだったら、確実にそれなりの売上を見込めたと思います。しかしそれだと、今度は逆にモチベーションが上がらず、結果的に失敗作になる可能性が高いと思ったんです。それよりは、逆境に身を置き背水の陣で書く方が、作品の質は確実に高まります。

入山 うーん、すごいなあ。実は僕には、そんな逆境のなか、岩崎さんが前作と同じくドラッカーをテーマにされたことも驚きだったんです。僕だったら『もし高校野球の女子マネージャーがジム・コリンズの『ビジョナリー・カンパニー』を読んだら』って本にするかもしれないな、と思ったのですが(笑)。その方が書きやすそうですよね。

岩崎 小説という形式で書く以上、ドラッカーを外す考えはなかったですね。先ほど入山先生がおっしゃっていたように、彼の文章には思わず引き込まれてしまう文学的価値がある。例えば、競争戦略で有名なポーターの本などもおもしろいのですが、文学的心を打たれる、というところまではいきません。『もしドラ』のアイデアを思いついたのも、ドラッカーの物語性にインスパイアされてのことですから。

入山 物語性といえば『もしイノ』、小説として、ものすごくおもしろかったです! 実は今回読んでいたら本当に引き込まれて、夜中まで読んで、朝の大学への移動でまた読んで……。こんなにも続きが気になる本が書けるなんてすごいな、と。それで、「なぜこの本はおもしろいんだろう?」と考えるなかで、僭越ながら、僕の本と岩崎さんの本ってちょっと似ているところがあると思ったんです。