近代以前の絵画は依頼を受けて描くのが基本
山田 ラファエロは「聖母子の画家」
と言われるくらい聖母子像が多いんだけど、たとえばこれはメディチ家の大公がずっと持っていたという作品ね。
こやま キリスト教的な絵ですね。
山田 このころのエライ画家にとって最も格式の高い画題は、宗教画と歴史画ですから。このふたつが描けないと一人前じゃないと思われてた。
こやま これって依頼されて描くものなんですか?
山田 近代以前の絵画は依頼を受けて描くのが基本だよ。
ラファエロの場合、大作の依頼が多かったことも、評価の高さを物語ってる。
バチカンには彼の大作が四方を飾る『ラファエロの間』があって、この有名な作品もそこにある。
こやま これ、「ブルータス」の美術特集で見ました!
たしか遠近法の説明で……。
山田 遠近法。そう、ラファエロに代表される西洋古典絵画の最大の特徴のひとつが、まさにこの遠近法なんです。遠近法にも2種類あって、ひとつが「一点透視図法」とも呼ばれる「線的遠近法」。画面のどこかに設けた「消失点」から線を外に向かって放射状に広げることで奥行きを表現する技法ですね。