ヒッチコックが自分の映画に出るみたいなノリで巨匠が!

山田 遠近法と陰影法、このふたつを使って、いかに絵画を立体的に描くかっていうのが西洋絵画の特徴で、ほかの文化圏の絵画と比べると、いちばんの特徴はそこなのよ。

こやま つまり、そういう技法がいっぱい入ってるから、ラファエロはお手本になるってことですね?

山田 そう。それから、宗教画とか歴史画とか、そういういちばん重要とされる分野でたくさんの名作を残したから。ちなみに、さっきの『アテナイの学堂』のなかに三大巨匠がいるのは知ってます?

こやま え?どこ?どこですか?

山田 この真ん中の二人ね、プラトンとアリストテレス。

こやま おお、哲学者的な人ですね。

山田 このルネサンスの時代に、いちばんエラかったのはプラトンなんだよね。中世ではアリストテレスのほうがエライことになってたんだけど。で、いちばんエライプラトン役を演ってるのが、さっきの肖像を見てピンとくるかもしれないけれど、レオナルド。

こやま あああ!ホントだ!

山田 プラトンのモデルになってるの。で、だったらミケランジェロはアリストテレス……かと思いきや、こっちなんだよね。手前で肘をついてる人。

こやま それは誰なんですか?

山田 ヘラクレイトスっていう哲学者で、かなり厭世的な人。世の中が嫌いな気むずかしい哲学者の役がミケランジェロ。

こやま キャラが合ってたんでしょうね。

山田 で、ラファエロがどこにいるかっていうと、右端のほう。

こやま おお!

山田 リスペクトしてるレオナルドはいちばんエラい役につけておいて、自分は古代ギリシャの画家アペレスに扮しつつもその他大勢に埋没させる。そんな気遣いができる画家。

こやま これ遊びで入れてるんですか?
ヒッチコックが自分の映画に出るみたいなノリですか?

山田 そうそう! 映画でいうカメオ出演ってやつ。

こやま けっこうおもしろいやつですね、ラファエロ。