『モナ・リザ』って
どこがそんなに名画なの?

山田 で、ダ・ヴィンチの立ち位置ですが。優美のラファエロ、力強さのミケランジェロでいうと、様式的にはラファエロ寄り。ていうか、逆にラファエロの優美さのほうがダ・ヴィンチから学んだものなんだけどね。

こやま そうですね。ラファエロは尊敬するダ・ヴィンチをマネしてる感じありますもんね。

山田 ミケランジェロには拒否られたけど、レオナルドからは大いに学んだ。

こやま ミケランジェロ、みんなと仲が悪いですね……。

山田 レオナルドも、名指しこそしてないけど、あきらかにミケランジェロをディスった一節を手記に残してますからね。筋肉をムキムキ描くのは下品で、うっすら感じられればいいんだと。ダ・ヴィンチが描く肉体は、さっきの『洗礼者ヨハネ』を見ても、ミケランジェロほど筋肉を描き込んでないでしょう?

こやま ああ、ほんとだ。

山田 ね。ダ・ヴィンチといえば美術解剖学でも有名で、筋肉の動きを正確にとらえていたはずだけど、それをミケランジェロのように露骨に描いたりはしない。

『モナ・リザ』1503-1519 年頃 ルーヴル美術館、パリ

こやま ラファエロとちょっと似てますよね。絵の感じとか。

山田 だから逆にラファエロのほうが似てるんだってば!で、いよいよ『モナ・リザ』の話になるんだけど、これ、なんでそこまで名画といわれてるの?

こやま なんでって……
なんかもう子どものときから有名だったから。

山田 世界堂の広告のせいだけじゃないと思うんだよ。

こやま そもそも世界堂が採用した理由も……。

山田 名画だから、なんだけど。
マルセル・デュシャンがパロディを描いたのも名画だから、なんだけど。じゃあそもそもなんで名画なのかって話。
そもそもこの作品、好き?

こやま いや、よくわからないです。なんだか微妙な表情してるし。

山田 そう!今、いいこと言っちゃいましたよ。
この微妙な表情ですよね。謎の微笑みと言われるやつです。この笑ってるんだか笑ってないんだかわからず、見る角度によって印象が変わる、微妙な表情。
よく学校の夜の美術室でモナ・リザの目が動いた!みたいなウワサが立ったりしませんでした?

こやま しましたしました!

山田 つまり、それくらいあやふやな表情をしてるわけですよ。よく見ると、男なのか女なのかもわからなくなってくる。フィレンツェの絹商人の奥さんだったリザ・デル・ジョコンドっていう人がモデルだったというのが定説にはなっているけど、もはや特定の人物の肖像画の域を超えてますよね。