「ウソ」は幼児の心理を探るよい機会

久保田カヨ子
((Kayoko Kubota)
1932年、大阪生まれ。
脳科学の権威である京都大学名誉教授・久保田競氏の妻で2人の息子の母。約30年前に、日本における伝統的な母子相伝の育児法を見直しながら、自身がアメリカ在住時と日本で実践してきた出産・育児経験をもとに、夫・競氏の脳科学理論に裏づけされた、“0歳から働きかける“久保田式育児法〈クボタメソッド〉を確立。この20年で3000人以上の赤ちゃんの脳を活性化させてきた。テレビなどで「脳科学おばあちゃん」として有名。2008年、株式会社『脳研工房』を立ち上げ、現在代表取締役。著書に、累計34万部突破のシリーズ『カヨ子ばあちゃん73の言葉』『カヨ子ばあちゃんの男の子の育て方』『カヨ子ばあちゃんのうちの子さえ賢ければいいんです。』『赤ちゃん教育──頭のいい子は歩くまでに決まる』『カヨ子ばあちゃんの子育て日めくり』(以上、ダイヤモンド社)などベストセラー多数。ズバッとした物言いのなかに、温かく頼りがいのあるアドバイスが好評。全国からの講演依頼もあとをたたない。
【株式会社脳研工房HP】 http://www.umanma.
co.jp/

「ママはトイレでタバコを吸うよ。ビールも飲むよ」
と言った長男の言葉で、私の母は驚いて、
「そんなイヤらしいことをしているの」
と私を詰問してきました。

 いったいどこからそんなことを想像して言ったのでしょう。

 しかし、私はこれを、「ウソ」をついたとは受け取りませんでした。きっとなにかから想像したのでしょう。

 ビールもタバコもたしなまない母親を不思議に思ったのか、吸ってほしかったのか、トイレにタバコのようなゴミが浮いていたのか、いまでも原因はわかりません。

「オオカミと少年」のようなウソ(『イソップ物語』に出てくる、人の関心をひきつけるためのウソ)を4~5歳までの幼児がつくことはめずらしくありません。

 幼児はウソと意識してウソをつきません。
ないものを“ある”と想像した言葉をウソと評したのでは、夢を育てられません。

 幼児がなにを考えているか、相づちを打ちながら、幼児の心理を探るよい機会と考えて、時には同調してやってください。

 ただ、あることないこと、口から出まかせに言うときがあり、これが長く続くことがあります。
 そんなときは無視したり、とりあわなかったりしながら、うまくさえぎっていきます。

「おばあちゃんのところへ行ってきたの」と言う男の子の言葉に、その子の祖母は遠くにいて、すぐ会えるわけはないので、「いつ行ってたの? どこへ?」と聞いてみると、具体的にしっかり答えました。

 いつも仲よしの同じ年の子には近くに2人のおばあちゃんがいて、その交流をうらやましく思っていたのです。

 いろいろと自分の“おばあちゃん”をつくって頭の中で遊んでいたからか、じつに見事にひとりのおばあちゃんをつくり出していました。