次世代リーダーシップは
「伝統ある同族企業」に学べ

経営理念というのは、「働く目的」としてのビジョンとほぼ同義だと考えていいでしょう。一方、企業哲学は、目的に向かって働くときのベースとなる心得であり、行動のための指針です。つまり、理念やビジョンが時代に応じて変化することもある一方、哲学は不変です。

しかしながら、哲学やビジョンが、額縁に入った「お題目」であっては意味がありません。これを現場に浸透させることに成功した企業だけが、「100年企業」となる資格を得るのです。

会社が100年を超える歴史を持つということは、当然のことながら、その経営者が何度か交代しているということを意味します。リーダーが変わっても企業が続いているということは、哲学や理念が一時的に浸透しているだけでなく、世代を超えて継承されているということにほかなりません。

ビジョンの継承という問題を考える場合、やはり同族経営だからこその強みはあります。寝食を共にする血族同士だから、言葉を超えた価値観を共有できる。つまり、哲学や理念が世代を超えて受け継がれやすい環境にあるのです。

柿安と同じく三重にある、赤福餅の老舗・株式会社赤福(本社 三重県伊勢市)でも、「赤福の社長の役割は、次の世代に伝統をつなぐことだ」と代々言い伝えられているそうです。日々の生活のなかであたり前のように、過去から預かった伝統を未来へ受け渡していけるのは、まさに同じ家族だからかもしれません。

(第6回へつづく・明日公開予定)