最近の労働環境は「ハラスメントブーム」状態。課長にとって、おそらく過去最大レベルに労働法の知識が求められる時代が訪れています。新刊『課長は労働法をこう使え!』の中から、事例とともに実践的な「法律の使い方」をお伝えする連載第4弾。

借金問題を抱える部下の話

 誰しも、個人的な問題を抱えているものです。しかし、気持ちに折り合いがつかないくらい大きな問題は、当然仕事に悪影響をもたらします。

 課長は、目の前の部下が悩んでいると、「仕事がうまくいっていないのだろうか」と思いがちですが、実際にはプライベートな悩みを抱えていることも多々あります。

 問題が表面化しやすい1つの代表例は、経済的な問題。とくに借金問題です。1つの事例を紹介しましょう。

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パチンコ店を複数経営する会社でのことです。
この会社では、売上を銀行に入金するのは、
本部に報告を上げるタイミングと合わせた月に一度きりで、
それまでは各店舗の金庫に現金を保管する形をとっていました。
とある店舗で、金庫の100万円とともに副店長が失踪する事件が発生。
この副店長は、時折無断欠勤するなどだらしなさが目立つ人物でした。
レンタルDVD店から副店長に対する督促の電話が、
店舗にまでかかってきたこともありました。
店長は副店長に対し、「気をつけろよ」と言うにとどめます。
プライベートなことにまで口を挟むべきではないと考えていたからです。
しかし、その3ヵ月後、また同じ督促電話が店舗にかかってきました。
それでも店長は、気にとめることはありませんでした。
また、この副店長はキャバクラ好きで、
頻繁に通っていると店長に話していました。

失踪した副店長を探そうと店長が捜索願を出すと、
実家に戻っていたことが判明。
店長が実家にかけた電話口で、副店長は告白します。
「キャバクラでお金を使いすぎて、消費者金融の借金が返せなくなりました」
後日、店長が副店長の自宅を訪れると、
未返却のDVDが山のように積み重なっていました。

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 この事案のポイントは2つ。まずは金庫の管理を副店長1人に任せきりにして、入金も月に一度だったという金銭管理体制の甘さです。そしてもう1つは、店長がもっと早くこの副店長のだらしなさを戒めるべきだったということです。

 レンタルDVD店から店舗に督促電話が何度もかかってくるというのは、見過ごせることではありません。キャバクラ通いが頻繁であることと合わせ、副店長のだらしなさの「アラート」は何度も発せられていたのです。それを放置した店長にも、責任があると言えるでしょう。