圧倒的な責任感がメンバーの心を動かす

【藤沢】社員の人もバイトの人も米山さんに巻き込まれている。その巻き込みの柱にビジョンがあるのですね。

福利厚生がいいから、給料がいいからエー・ピーで働く、というよりも、この会社で働くことがおもしろいとか楽しいとか魅力を感じてきている。先日、宮崎県に行ったときは、知事や県の職員の方が、宮崎県はエー・ピーさんと一心同体ですとおっしゃいました

生産者の方たちも含めて、米山さんがいろいろな人を巻き込むことができる(笑)のはなぜでしょう。巻き込まれる人たちは、必ずしも経済的理由だけではないですよね…? 米山さん自身も、宮崎を助けてあげようとかいう気持ちでやっているわけではないでしょう?

【米山】僕自身は、助けてあげたい、という感じではなく、「消費者に一番近いところにいる僕たちが『つなぐ』役割を担うことで、第一次産業を支えるべきであり、そうする必要があると思うから」ということですね。それが僕の大きなモチベーションになっています。生産者の方々は…、う~ん、経済的理由だけで巻き込まれてくれるわけではないと思うのですが…。

僕が「カリスマ経営者」のマネをしない理由

【エー・ピーカンパニー広報担当者】米山本人は気づいていないと思うんですけど(笑)、社長を見ていていつも感じるのは、生産者に対しても、社員に対しても、圧倒的な責任感を持っていることです。それが、生産者の方々や、社員の気持ちをひきつけているのではないでしょうか。

数字が少し落ちたとき、年頭の挨拶は「ごめんなさい」の一言からはじまりました。「社員に数字の負担をかけてしまったが、それは自分の責任だ。ごめんなさい」と。年末年始、本社の社員も店舗に立ち、あたふたと働きましたが、その大変さが社長の一言で綺麗に洗い流されたような想いがしました。

【藤沢】そうですよね。

【広報担当者】生産者に対しても、助けようというより、巻き込んでしまったのだから店舗を増やしてスケールメリットでお返しをしたい、という気持ちが強い。
自分の言葉を信じて入社を決意してくれた新卒社員に対して、入社式で語りかけるのは「おめでとう」ではなく、「ありがとうございます」です。

【藤沢】それを言われると泣けますよね。

仕事をするのは大変なので、どこかで「ありがとう」とか、「助かったよ」と言って欲しいですからね。飲食店ではお客さんから言ってもらうことがあるとしても、社長から言ってもらったら、けっこう泣けると思いますよ。

【米山】あたりまえだと思うんですよね。雇ってあげているとか、生産者から買ってあげているという気持ちはないですから。

中国の店舗で中国人スタッフにそういう話をしていたら、突然泣きだしたことがあります。中国では雇ってあげている、給料をあげているのだからありがたいと思えという会社が多いそうで、「もっと夢見ていいんだよ」というと、「えっ? 仕事しながら夢見ていいんですか?」「給料もらっているだけで十分です」などと言う。

【藤沢】日本でも、仕事って稼ぐための苦役だと思っている人が圧倒的だと思うんですよ。だから仕事とプライベートを分けたいとかいうけれど、米山さん自身は仕事とプライベートはあまり関係がなく、やりたいことをやるためにいろんな人を巻き込んでみんなでやっている。中心はご自身がしたいことをやっている、ということですか。

【米山】そうですね。新しい価値観を産んでいく、世の中を変えていくという想いで、それを伝えていく感じ。

宮崎などの地方自治体や生産者の方々にも深く入り込んでいますが、僕の次の役目として、宮崎の成功事例を糧に、現在、鹿児島や北海道、岩手、福井などでも同様の取り組みをしています。それらの地方自治体の人たちに宮崎に行ってもらい、当社との取り組みについて話を聞いてもらう。宮崎県庁の方々も、楽しそうに話してくれています。