書評家とは「本のDJ」である
一方で、「読む本を選り好みするな」といわれても、なかなか難しい部分はありますよね。実際、自分の興味の範囲外の本で、しかも最終的に「読んでよかった」と思えるような本を探すのは、そう簡単なことではありません。
それでも方法はあります。おすすめしたいのが、「他人」を使うということ。
ここでまた音楽の話をさせてください。80年代中期にDJカルチャーに感化された僕は、バーやボウリング場などでDJのまねごとをはじめ、90年代にはクラブDJとしても活動していました。
いくつかの理由があってクラブ活動はもうしなくなりましたが、いまでも下北沢のDJバーなどでイベントを開催することがあります(ぜひ、遊びに来てください)。
DJ(ディスクジョッキー)と聞いて、「ラジオでしゃべる人でしょ?」というベタな反応をする人はさすがに減りましたが、それでもまだ世の中のイメージとしては「クラブなどで音楽をかけるだけの人」というところではないでしょうか。
自分で楽器を演奏しない「手抜きのミュージシャン」みたいに誤解している人が多いように思います。
たしかにDJは音楽をかける人なのですが、もっと突っ込んでいうと、音楽をかけることで「場の空気」をつくるのがDJの基本的な役割です。
盛り上がりに期待するお客さんで溢れた週末のクラブなら、アッパーな曲をかけてどんどんフロアの熱を上げていきますし、落ち着いた雰囲気のラウンジでは、リラックスできるような選曲が必須です。静かな場所でアゲアゲのダンス・チューンをかけまくっても、それは単なる勘違い。
つまりDJには、場の空気に合った音楽を瞬時に選ぶセンスと知識が必要なのです。