「脳科学おばあちゃん」久保田カヨ子氏(83)と脳科学の権威・久保田競氏(83)注目の新刊『1歳からみるみる頭がよくなる51の方法』。
ソニー創業者・井深大氏も絶賛した『赤ちゃん教育――頭のいい子は歩くまでに決まる』の続篇として、ついにリリースされた「1歳から感性豊かな脳を育む五感トレーニング」を、「脳科学おばあちゃん」にこっそり紹介してもらおう。
“グチャグチャ描き”をどうやめさせたか
(Kayoko Kubota)
1932年、大阪生まれ。
脳科学の権威である京都大学名誉教授・久保田競氏の妻で2人の息子の母。約30年前に、日本における伝統的な母子相伝の育児法を見直しながら、自身がアメリカ在住時と日本で実践してきた出産・育児経験をもとに、夫・競氏の脳科学理論に裏づけされた、“0歳から働きかける“久保田式育児法〈クボタメソッド〉を確立。この20年で3000人以上の赤ちゃんの脳を活性化させてきた。テレビなどで「脳科学おばあちゃん」として有名。著書に、累計36万部突破のシリーズ『カヨ子ばあちゃん73の言葉』『カヨ子ばあちゃんの男の子の育て方』『カヨ子ばあちゃんのうちの子さえ賢ければいいんです。』『赤ちゃん教育──頭のいい子は歩くまでに決まる』『カヨ子ばあちゃんの子育て日めくり』『0歳からみるみる賢くなる55の心得』(以上、ダイヤモンド社)などベストセラー多数。ズバッとした物言いのなかに、温かく頼りがいのあるアドバイスが好評。
【株式会社脳研工房HP】 http://www.umanma.
co.jp/
使い古しの連続プリント用紙に、次から次にグチャグチャ描きをしている幼稚園児がいました。
お母さんは、ひとり遊びが長く続くので、子どもの面倒を見る手間が省けていいのか、理由はわかりませんが、そのままにしていました。
10センチ以上の高さに重なった紙に、主として黒の鉛筆で描かれ、どの紙面も円と線ばかりでした。
この光景は、私の目には異常に映りました。
どうしても描いているときの子どもの様子を見たくて、お宅へ伺いました。
すると、居間のサイドテーブルの下にA4サイズの紙の束が置いてあり、そのまま引っ張りだしてテーブルの上に広げて、描いていました。
身体を前後に揺らしながら、「グワーッ、ダダダダ、ビューン、バーン、ザァザァー」と濁音ばかりが耳につく声を出し、そのリズムより速く鉛筆が動きます。
紙の3分の1くらいを使って、まん中に黒いもつれた糸くずの塊を描き、次から次へと紙を使います。
動作も自分の腕の動く範囲で、手はあまり伸ばしません。
私はお母さんに、
「グチャグチャ描きをこれ以上続けさせてはダメ。紙は1枚だけ与えて、円と三角と直線を描かせること。『円を3つ、それより小さな円を3つ』と言って、そのとおり描けるように導くこと」
と言い残して帰りました。
でも、その子は言われたとおりに描くのをイヤがり、いつも途中で投げ出して機嫌が悪くなるそうです。
その後も、“声入りのグチャグチャ描き”は続きました。
課題を描く――言われたとおりのものを素直に描ける脳の働きができてこそ、自分の心のおもむくままに描くことができるのです。
(Kisou Kubota)1932年生まれ。医学博士、京都大学名誉教授。世界で最も権威がある脳の学会「米国神経科学会」で行った研究発表は日本人最多の100点以上にのぼり、現代日本において「脳、特に前頭前野の構造・機能」研究の権威。2011年、瑞宝中綬章受章。『ランニングと脳』『天才脳をつくる0歳教育』『あなたの脳が9割変わる!超「朝活」法』など著書多数。
つまり、自由な絵を描けるというわけです。
この子の場合、ロケットが動き、レーザーが飛び交い、ミサイルが炸裂する様を音入りで線描きし、瞬間のイメージの世界に入っています。
つまり、ストーリーはどうでもいいわけです。戦闘場面に自分の身を置いて、本能的なものに陶酔してしまっています。
こんな状況では、これ以上の向上は、まったく見込めないのです。
もうお母さんの手には負えません。
そこで私は紙をとり上げ、グチャグチャ描きをやめさせ、絵の具を与え、ぬり絵、写し絵をさせ、雲形定規などを使わせて、テーマどおりの形を色で描く時間をつくりました。
そして、家族中で同じことをしてもらい、グチャグチャ描きを卒業させたのです。