実を言うと、僕が経営しているのは、まさにこの企業価値評価(ファイナンス用語でバリュエーション)を専門にした会社だ。特定の金融機関や監査法人に属していない独立系の企業としては、国内でトップの業績を上げ続けている。

会社というものの値段が問題になるのは、わかりやすいところで言えば、企業買収のような局面だ。

ある企業F社が別の非上場企業G社を買収するとき、いったいいくらを出せばG社を買えることになるのか、というのは悩ましい問題だ。こういうとき、あなたがF社の社長なら、いったいどうやってG社の適正な価格を見極めるだろうか? G社のオーナーは「どうせ買収されるんだから……」と考えて、法外な値段で自分を身売りしようとしてはいないだろうか?

そこで僕たちが使うのがファイナンスの考え方だ。コスト・アプローチ(原価法)でもマーケット・アプローチ(取引事例比較法)でもない方法を使って、その会社の適正な価値を割り出すわけである。

ファイナンスの因果律は「逆」

前回の連載で「銀座で飲むコーヒーはなぜ高いのか?」という問題を掲げたのを読んだ方もいるだろう。

「なぜ銀座のコーヒーは高いのか?」

これに対するファイナンス理論の答えはこうだ――銀座では高いコーヒーでも売れるから