興した人ではなく―通過点の人
【藤沢】自分は優れたリーダーではないとおっしゃっていましたが、それはなぜですか?
【山田】もともと僕自身は、リーダーシップをとるタイプかというと、必ずしもそうではないんです。学生時代に生徒会長をやっていたわけでもないし、今でも会社以外の場所では決してリーダー的なキャラクターではないですね。
けれど、先祖がはじめた事業を守り育てていく立場にある以上、リーダーとしてやっていかざるを得なかったという側面があります。
【藤沢】先代から受け継いだ事業に対する責任感ですね。
【山田】そうなんです。あと、僕にはやっぱり、自ら起業した人たちのような「すごさ」がない、という思いがあります。言い方を変えれば、今の環境や立場は引き継いだものであり、自分の努力で得たものではない。僕は「通過点の人」なんだよね。でも、だからこそ「せめて何かを残さなければ…」という思いでやっているわけです。
【藤沢】興した人、ではなく、通過点の人。
【山田】そう。だからある意味で、「冷めている」というか「肩の力が抜けている」「開き直っている」といった部分があると思います。「成功して上場するぞ!」とか「みんなに注目されたい!」といった個人的なインセンティブがまったくない。そこが僕のリーダーシップの特徴をつくっているんじゃないかと自分なりに分析しています。
【藤沢】山田さんには「名誉欲」みたいなものはないのですか?
【山田】これが……ほとんどないんです。いろんなリーダーがいらっしゃると思うけど、僕は少し淡白すぎるかもしれないね。
僕自身はもともと、学者になってサイエンスを極めたいと思っていたんですよ。でも才能がないとわかったので(笑)、「それなら親の期待もあるし…」ということで、いまのポジションに立つことにしたわけです。
【藤沢】そうは言っても、情熱家の部分もお持ちだと思いますよ。
【山田】うん…そうね。社員からすれば、「『淡白』なんて言っているわりには、普段はずいぶんねちっこいな」と思われる部分もあるかもしれません(笑)。