合理的につくられた創業計画書
収支見通しはとってもシンプル!

 公庫の創業計画書には、いくつか特徴的な部分があります。一般的な事業計画書といえば、「経営理念」「事業戦略」「マーケティング計画」などが入っていますが、そのような欄は一切見当たりません。いずれも、起業志望者が「どうしようか?」と頭を抱えてしまいがちな項目です。でも、創業計画書を作成するプロセスでは、まったく考える必要はないのです。

 起業家が事業を軌道に乗せるうえで重要な要素には違いありませんが、日本政策金融公庫の融資審査の材料としては優先順位が低いということです。

 また、もっとも重要な収支見通しを記入する「事業の見通し」の欄は、とてもユニークな形式です。収支見通しは、「1年後、2年後、3年後……」と時系列で表をつくるのが普通ですが、なぜか「創業当初」と「軌道に乗った後」という2つの列だけで構成されています

 私の推測ですが、この形式になっている理由は、審査の担当者が比較的容易に予測の妥当性を検討できるからだと思います。表形式で数年後までの数字が並んでいても、書類の量が多くなるうえに、実現可能性の判断がしにくくなるという側面もあるでしょう。

 ところで、創業融資を受けられるのは日本政策金融公庫だけではありません。都道府県や市区町村が実施している「制度融資」もあります。「制度融資」の場合は、各都道府県にある信用保証協会という機関の保証を受けることが融資の条件になっています。この信用保証協会にも「創業計画書」の様式があり、東京信用保証協会のホームページからダウンロードできます。

 東京信用保証協会の「創業計画書」の様式を見ると、内容は日本政策金融公庫のものとよく似ているシンプルなものです。用紙の枚数こそA4サイズで3枚ですが、実質的には日本政策金融公庫の1枚の用紙と変わりません

 日本政策金融公庫、信用保証協会ともに、創業計画書は非常にシンプルにできており、比較的簡単に作成できる事業計画書なのです。