言葉に強い意識をもつ会社が影響力を持つ

【藤沢】柳澤さんは、言葉をすごく大事にしていますよね。経営理念がどのようなものかも、明確に定義されている。

【柳澤】カヤックにおいては、コンテンツがいかにシェアされるかとか、人の心を動かすコピーが書けるかとか、そういうことはすごく重要で、社内でもコピーライターの存在は大きいですね。会社だけでなく、リーダーにとっても言葉は重要だと思います。大統領にだって最高のスピーチライターがいるわけですから。

【藤沢】人の心を動かすコピーや言葉というのは、どうしたら生まれてくるんですか?何に気をつけているんですか?

【柳澤】なぜこの言葉なのか、っていう「言葉の定義」「言葉のチョイスの仕方」を丁寧に考えるようにはしていますね。ある言葉の持つイメージや響きっていうのは人によって違うから、客観性がないと判断がつかないじゃないですか。

【藤沢】確かに。

【柳澤】言葉って、とてもローカル色の強いものなんですよね。コピーライターほどグローバルで活躍するのが難しい職業はないと思っているんです。

エンジニアは世界共通の職業だし、デザイナーも比較的ローカル色が強くて文化によって変わるけど、世界的に有名なデザイナーというのはいる。でもコピーは一番難しいと思うんです。1人のコピーライターが各国語に長けているということは、なかなかないんじゃないでしょうか。

言葉はそれくらいローカル色が強いから、打って響く言葉というのは地域や時代ごとに違う。言葉で文化がつくられると考えているから、そのぶん言葉の使い方は社内ではすごく重視していますし、文章を書ける人が比較的、評価される会社かもしれません。

【藤沢】へー。ネットの会社なのに意外な感じですね。面白い。文章が書けるかどうかは、採用の段階から確かめているんですか?

【柳澤】履歴書で文才が決め手になることもあります。「エイプリルフール採用」っていう、あえて経歴を詐称した履歴書でのエントリーも4月1日限定で受け付けていますけど、これも文才を見るケースが多い。

【藤沢】文才や言葉遣いのチェックは、柳澤さんが直接されるんですか?

【柳澤】いや、ぼくだけではなくて、人事部も含めてですね。

【藤沢】じゃあ本当に、社員みんなが、言葉に対して強い意識を持っているんですね。