ITを活用した農業系ベンチャーが続々と誕生
国土が狭く、農地も少なく、使用できる農業用水に限りがあるイスラエルでは、ITによる徹底した管理によって作物の収量を高め、無駄を省いてきた。前述のAKOL社はイスラエルの中でも初期のクラウドベースのシステム産業である。
農家はAKOL社から畜産や作物栽培において的確なアドバイスを得ることができる。いつ餌を与えるのか、いつ種を播種、灌漑、収穫、そして市場に出すのか、といったアドバイスだ。
たとえその農家が貧しかったとしても、専門家による的確な情報を手に入れることができるのは情報格差をなくす点でとても有意義なことであり、AKOL社自身もそのことを売りにしている。
近年では、AKOL社の後を追うようにさまざまな農業ベンチャーが生まれてきた。その一つ、Phytech(フィテック)社は最近勢いのある会社である。Phytech社は、給水に関して「意思決定援助ツール」を提供する。給水時期や給水量といった水の管理を最適化し、それによって作物の収穫量を最大化することができる。
また、PCやスマートフォンに導入したアプリケーションでは、作物のストレスレベルをチェックすることができる。生産者はそのアプリケーションを用いて、供給すべき必要な水分量を知ることができ、収穫量を最大化することができる。Phytech社はIoP(インターネット・オブ・プラント)を構築している。これは衛星画像、気象データ、土壌水分量、作物の環境要因といったデータを集約することである。すべてのデータはクラウドに運ばれ分析され、収穫量を最大化するための警告やアドバイスが発信される。
Phytech社は2012年~2014年の2度にわたる投資家との交渉の過程で、300万ドルのシードファンドを調達することに成功し、これにより同社は急成長を遂げ新規市場へ参入することが可能となった。
同社のビジネスモデルはデータ購読サービスを基本としており、生産者は季節ごとに、作物に応じたデータの購読料金を支払う。サービスのフルパッケージには、作物に取り付けるセンサーから分析用クラウドシステムまでのすべてが含まれている。
Amitec社はエネルギー管理、太陽光発電、そしてセキュリティを提供する。その中の一つであるAgroAmitecという製品はハウス栽培や畜産小屋のために機能するものであり、空調、室温、日照を遮るシェードのレベルを自動で管理するシステムである。ハウスでのテストによると、胡椒の収量は40%増加し、水の使用量は30%減少したという。
イスラエルには以上に紹介したようなITと農業を融合させた技術が数多く生まれている。