日本型雇用システムが産んだカルチャーは
意図せずにフリーライダーを抑制していた

 先週の記事では、終身雇用を中心とする日本型雇用システムが、フリーライドを合理的に抑制してきたという話をした。

 ここでいう日本型雇用システムとは、企業と社員が長期的な関係を結ぶことに基づいた様々な制度やルールを指す。

 このようなシステムが意味するのは、会社と自分が運命共同体であることだ。したがって、会社が潰れれば元も子もないので、どんな利己的な者にも「ひどいフリーライドはしない」という抑制がかかる。

 つまり、このような制度の下にいる「普通の」社員は、「会社に迷惑かけない程度に、仕事していたらクビにはならないし、将来も安泰だ」というメンタリティを持ちやすくなる。

 それはやがて「企業風土」となり、「カルチャー」となる。終身雇用制は日本全体に存在していたため、このメンタリティは日本人雇用者全体のメンタリティを代表していると言ってもよいだろう。

 そう、このメンタリティは「チャレンジしない」「リスクを恐れる」「ヒトを巻き込まない」「自分も巻き込まれない」「指示待ち社員」などの行動となって現れる。

 連載第8回で述べた「顧客満足を履き違えた社員」の例は、この典型だろう。拙著『フリーライダー――あなたの隣のただのり社員』でも、このメンタリティが元で「暗黒フォース型」の企業ができ上がるメカニズムについて、述べている。

 一方、このようなシステムの下では、経営者や管理職の側では、フリーライダーの問題をあまり真剣に考えなくてもよいことになる。放っておいても、社員がひどいタダ乗りはしないようなシステムだからである。