最近、野菜や穀物がおかしい。ここ数ヵ月にわたって、店頭のあらゆる野菜価格が高騰し、輸入小麦の国際価格も高止まりを続けている。春から夏にかけて続いた長雨や猛暑などの異常気象により、農作物が深刻なダメージを受け、供給が不足しているからだ。日本の食卓に深刻な影響を与えかねない「野菜・穀物クライシス」は、猛暑がようやく去ったからと言って、終わるものではない。その背景には、単なる天候問題に留まらない、市場の構造的な問題が横たわっている。(取材・文/友清 哲、協力/プレスラボ)
ニンジンが8割、ジャガイモが4割も値上がり!
この夏、日本の食卓を襲った「野菜の異常」
「スーパーで野菜がこれだけ値上がりするなんて、どう考えても異常。ただでさえ不況で外食費も節約しているのに、野菜さえ満足に食べられないなんて……」
この春から夏にかけて、全国各地の主婦たちがこんな溜め息を漏らしたことは、記憶に新しい。庶民にとって最も身近な食材であったはずの野菜の価格が、異常なほど高騰したのである。
農林水産省の調査によると、8月下旬の東京都中央卸売市場における野菜1キロ当たりの卸価格は、過去3年間の同時期の平均と比べて、ニンジンが約8割高の213円、トマトが同3割高の410円、ジャガイモが同4割高の158円、ピーマンが同2割高の301円となった。
今は価格が比較的落ち着いているものの、春先にはレタス、キャベツ、ナスも全国平均でそれぞれ約2~3割ほど高騰していた。
原因は、長引く異常気象で野菜の収穫高が落ち込み、供給が不足しているためだ。日本列島は春先に長雨と寒気に震え、梅雨明け以降は一転、記録的な猛暑に襲われた。数ヵ月間に渡る異常気象は野菜の根に深刻なダメージを与え、生育を阻害したのだ。