仕事上のちょっとした工夫が、成果や評価に大きな差をうむものではないでしょうか。世界一のコンサルティングファームで世界7ヵ国のビジネスに携わった著者が、社内外の“できる人”たちの仕事の鉄則をまとめた翻訳書『47原則 世界で一番仕事ができる人たちはどこで差をつけているのか?』(原著タイトル“THE McKINSEY EDGE”)より、今日からでも役立つ成功原則の一部を紹介していきます。
今日のお題は「上司の依頼を冷静にかわす」。上司からたくさんの仕事を振られるのは信頼の証…だとしても、できる人ほど上司の依頼をかわすのがうまいと知っていましたか?
上司や先輩から仕事を振られるのはありがたいことです。しかし、常にたくさんの仕事に埋もれている毎日のなかで、優先順位をつける必要は出てきます。それも仕事の依頼を受けたタイミングで、かわすのがうまい人もいれば下手な人もいます。その違いはどこにあるのでしょうか。
迷ったら24時間ルールを徹底する
限界を超える仕事を頼まれた場合、感情が論理に勝り、本能的な反応が表面化します。論理的に考えるには感情が落ち着いていなければなりませんが、さざなみ立った否定的な感情が治まるまでには、自分が思っているより長い時間を要します。
そんなときの秀逸なアドバイスとして、シニア・プリンシパルのジョージがまずは「24時間ルール」を徹底するよう教えてくれました。誰かに理不尽な仕事を命じられたと感じた場合は必ず、24時間待ってから対案を出しましょう。このルールを支える根拠は次の2点にあります。
1 相手(上司)は心からあなたと会社のためを思っている
2 感情に任せて「ノー」と言ったり反論した場合、後で後悔することが多い。
例えば、クライアントへの提案に先立ち、提案の規模にかかわらず、必ずプレゼン資料一式の準備をあなたに厳命するシニア・ディレクターがいると仮定しましょう。問題に対する仮説を立てたプレゼンを準備することにより、プロジェクトの入札に勝つ可能性が大幅に高まる場合は、その準備の重要性をあなたも承知しているはずです。しかし、それ以外の場合、情報はかなり曖昧で準備の必要性がどの程度かよくわかりません。
厄介なのは、次のような状況にあるときです。
本格的な議論に入る前の段階では、あなたには確かなことがわからないし、「貴重な時間を無駄にしたくない」という気持ちが強く、判断力が鈍っています。「一番大事なことに集中したい」と思っているからです。
そんなときこそ、24時間の猶予を自分に与えましょう。
こうすると、状況を掌握する力が高まります。感情に任せてはねつけたいという衝動に駆られたり、100%の確信が持てないときには、24時間ルールを使ってみてください。このルールに従うと、少なくとも深く納得して全力投球で仕事に取り組めるだけでなく、一生懸命取り組んだことがアウトプットにも反映されるという、二重のメリットがあります。
「どうやって」より「なぜ」行うのかを考える
そして大切なのは、新しい業務を命じられた場合に真っ先に心配になる“どうやって”実行するか、つまり資源となる時間や能力のことから一歩下がってみることです。まずは、「目的は“何だろう?”」あるいは「“なぜ”これを行うのだろう?」という簡単な質問に答えてみてください。
次に、要求された仕事のインパクトを明らかにするため、あなたがかける労力の価値をざっくり見積もりましょう。こうすると、先ほどの“なぜ”の質問をもっと正確に掘り下げやすくなります。できれば、取り組む価値があるという根拠を数字で示しましょう。仕事の目的を理解するにしても、インパクトの大きさを見積もるにしても、その結果、仕事の相対的な重要性が当事者双方にとって明確になることが肝心です。
目的とインパクトの両方が妥当であった場合に限り、次のステップに移って、必要な人員や能力、スケジュールの検証など、“どうやって”実行するかを検討すればいいのです。
シニア・リーダーは、あなたの仕事に喜んでアイデアを提供してくれます。本当に素晴らしいアイデアが沢山出されるはずです。ただし、シニア・リーダーは同時進行する仕事を他にも数多く抱えている、という点も頭に入れておかなければなりません。
直属の上司かクライアント側の担当者でない限り、「一般的な経験則として、シニア・リーダーからの指示の大半はできるだけ聞き流すこと」と、あるプリンシパルが教えてくれました。
「『この3つのアイデアが(10個のうちで)特に気に入ったので詳しく教えてください』などと言って、あなたにとって不要なほかの7つを除いた、その3つの素晴らしいアイデアだけに焦点を絞って尋ね直すんだ。すると、残りの7つのことは忘れてしまうよ」
もし、不要だと思ったアイデアについて相手が何度も話を戻すようであれば、それが本当に大事なことだとわかります。では、シニア・ディレクターが断固として10個全部を残したいと考える場合はどうしたらいいでしょう?
その場合、シニア・ディレクターには善良な意図があると仮定して、“なぜ”彼がそう言っているのか、理解に努めましょう。
例えば、上司が過去に見た成功事例をとにかく取り入れたいだけで本件の主旨から大きく外れていないか、それとも本件の抱える特定の問題を解決できるよう協力してくれているのかどうかを、その時点で見極めることが重要です。相手について前向きな物の見方をしている限り、仮に相手のアイデアを却下しても良好な人間関係が保たれるでしょう。
優れたリーダーは上司の指示10個をその場で半分にできる
この考え方は、マッキンゼーで全社的に共有されてきたと思います。経営再建請負人として信頼の厚いアソシエイト・プリンシパルのサイモンは次のように言っていました。
「優れたプロジェクトリーダーは、10個の指示を受けたらその場で5個にしてしまう。平凡なリーダーは10個すべてを受け入れる。最悪のリーダーは10個を倍にしてしまう。10個を受け入れて60%の成果を上げるより、3個に関して120%の成果を上げるほうが絶対にいい」
何よりも肝心なのは、仕事の依頼をかわすのが上手な人たちは、結局多くの仕事をこなすことができるということです。24時間ルールや評価プロセスといった独自の方法を考え出し、物事の良い面に焦点を当てて、感情をできるだけ抑えて対応できるからです。