努力には「いい努力」と「そうでない努力」がある。では、その「ちがい」とは何か?最高の成果が得られる「いい努力」をするための考え方、動き方とは?何がせっかくの努力をただの「時間のムダ」に変えてしまうのか?
世界最高のコンサルティングファームのトップコンサルタントとして得た豊富な経験から生み出した、生産性が劇的に上がる「仕事の方法」について、話題の新刊『マッキンゼーで25年にわたって膨大な仕事をしてわかった いい努力』から紹介する。
つねに「否定」から入る人たち
「山梨さんはいつも否定から入るよね」
マッキンゼーに入って3年目か4年目だったと思う。コンサルタントとして消費財関係の仕事を始めたころ、親しい先輩にこう言われた。とても反省したし、拙著『プロヴォカティブ・シンキング』(東洋経済新報社)でも言及したくらい印象に残っている。
言い訳をするわけではないが、これは私に限った話ではない。その後、コンサルタントとして仕事をしていく中でも、否定から入るタイプの人に少なからず出会ってきた。とくに大企業の管理部門のスタッフなどには、こうしたタイプの人は多い。
たとえば大手メーカーの本社スタッフに、支社の現場から新たな提案が入るとする。
「この課題ですけど、こういう新しいやり方で解決できるんじゃないでしょうか」
すると本社側の第一声は「でも」だ。そのあと、過去のデータや事例を根拠とする「できない理由」が続く。
こうなってしまう原因は三つある。
一つは、「上から目線」。
人は提案を受けて判断する立場に立つと、悪気はなくても知らず知らずのうちに、傲慢になってしまう。ずっと同じ本社部門にいるなどつねにそうした立場にいると、上から目線と視野の狭さがセットになることも少なくない。
すると「うちの会社はずっとこうしてきたから」「あえてそんなこと、わが社がやる必要がある?」という発言が出てくるようになる。
もう一つは、「耳年増(みみどしま)」になっていること。
管理部門などで前例や過去のデータに精通し、さまざまなトライアンドエラーの結果を知っていると、「提案に対するダメな理由」をいくらでも述べられるようになる。いつしか頭でっかちになり、やる前から「結果はわかっている」という感覚になってしまう。