できる範囲内で、
気を紛らわしながらやろう

久保田 競
(Kisou Kubota)
京都大学名誉教授、医学博士。世界で最も権威がある脳の学会「米国神経科学会」で行った研究発表は、日本人最多の100点以上にのぼり、現代日本において「脳、特に前頭前野の構造・機能」研究の権威。2011年、瑞宝中綬章受章。1932年、大阪生まれ。著書に、『1歳からみるみる頭がよくなる51の方法』『赤ちゃん教育――頭のいい子は歩くまでに決まる』『あなたの脳が9割変わる! 超「朝活」法』(以上、ダイヤモンド社)などベスト&ロングセラー多数。

 どうしてそうなるのでしょうか?

 お母さんになんでもしてもらわなくてはならない赤ちゃんのときから、誰にも少しずつこの傾向は現れているのですが……。

 かんしゃくは、赤ちゃんが気分が悪くなったときに起こる赤ちゃんなりの意思表示で、親やまわりの大人が、それをどう受け止めているかが問題です。

 赤ちゃんは、親に合わせてうまく不満をぶつけられません。

 お乳がほしい!おしっこ!痛い!と泣く……一方的な意思表示にオロオロと親が従っていた生まれたばかりの嬰児(えいじ)のころと比べると、成長に従い、親の都合で赤ちゃんの気持ちを聞かなくなります。

これが幼児教育の一番難しいところで、親は自分を抑えること(我慢、辛抱、待つ)を無意識に子どもに強制しているのです

 子どもは、病的にまできつい表現で抵抗し、反抗してきます。
 嬰児ですら、オムツ替えのときに声をかけることもなく、何の前ぶれもないまま冷たい手で肌に触れたら、ビックリして身体を縮め、声を引きつらせて気張ります。
 これが、精いっぱいの反抗で、防御反応です。

 細心の注意を払って育児にかかりっきりになることは、しょせん無理です。

ちょっと気を紛らわしながらいきましょう。

 月齢が進めば、子どもの不安や不満への対処も遅れ、子どもの要望も聞きそびれてしまいます。

 難しいのは百も承知ですが、かんしゃくが起こらないようにするには、お母さんができる範囲内で、いつも同じように応答していきましょう。

<競博士のひと言>

 第2次世界大戦前、「癇かん癪しゃく玉(砂に火薬を混ぜ、紙に包んだボール)」という、地面に投げつけると爆発して音を出すおもちゃがありました。
「かんしゃくを起こす」とは、神経過敏で怒りやすい性質のことです。
 かんしゃくを起こした赤ちゃんは、泣きわめいていたり、貧血を起こして顔が白くなったり、息切れして青くなったりします。
 強い怒りには、理由があります。ただ、なかなか理由は言えないので、まずは落ちつかせることです。
 漢方では、夜、発作的に泣いたり、怖い夢を見たり、ひきつけを起こしたりしたら、かんの虫が出た、と考えたものです。