ギバーになれる分野にこそチャンスがある

 このスキルは起業ネタを見つけるためにも役立ちます。

「起業したいんですけど、何をすればいいかわかりません」という人に私はこんなアドバイスをしています。「これまでタダでやってきて喜ばれたことはありませんか?」と尋ねるのです。それを起業ネタにできた人は、間違いなくうまくいきます。

 電気メーカーにお勤めのDさん(52歳)は、若いころからバドミントンが大好きでした。これまで学生や社会人に無償でバドミントンの指導をしてきたといいます。まさにギバーとして与える行為を長年続けてきたわけです。

 そこでバドミントンのスクールを開校しました。入校者は順調に集まり、Dさん氏の起業はうまくいったのです。好きなバドミントンを仕事にしていますから、毎日が楽しいそうです。

 自分がギバーになれる分野にこそチャンスがあります。そして、幸せの秘訣もそこにあるのです。

時間に鷹揚になってギバーになろう!

 人は助けてもらうと恩に報いたいと思い、お返しの義務を感じます。反対に奪われれば取り返そうとします。だから、受け取りたいものを先に与えれば、より多くの見返りを得ることができるのです。先に受け取って、あとから与えようと考えると、きっとあなたの期待は裏切られます。

 人を助けることでその評判が広がります。そして、巡り巡って自分が助けてもらえるわけです。まさに「情けは人のためならず」です。

 では、どうすればギバーになれるのでしょうか?

 今日から自分はギバーになるぞと決意して、いくら努力しても、いきなり営業成績がトップになったり、職場の人間関係が改善されたりはしません。「与える人が成功する」というロジックは現象として起きるまでに時間がかかるのです。「即効性」や「確実性」を求める人はギバーにはなれません。

 ペンシルベニア大学ウォートン校のアダム・グラント教授は、「時間的に鷹揚な人でなければギバーにはなれない」と言います。ギバーにとって恩恵は「思いがけず来るもの」であって、事前に期待したり損得勘定したりするものではないのです。

参考文献/『GIVE&TAKE』アダム・グラント著 楠木建監訳(三笠書房)