瞑想の「科学的裏づけ」が進んでいる

「どうじゃ?世界のエリートたちがこの休息法を実践する気持ちが少しはわかってきたかな」

ヨーダは一気にまくし立てると、手元の緑茶をすすった。

「う〜ん、でも、こんなものに本当に効果があるんでしょうか?正直言って、時間を持て余したお金持ちの暇つぶしとしか思えません」

私はこれでもかなり遠慮した物言いをしたつもりだった。半信半疑どころか、まったく信じる気になれない。

「ふぉふぉふぉ、スーパー!!先ほど言ったじゃろ?マインドフルネスは最高の休息法じゃと。なぜわしがここまで言いきるかと言えば、これがただの東洋式瞑想の焼き直しに留まらず、科学的に裏づけられたものに進化しつつあるからじゃ。ナツはフォローしとらんようじゃが、世界トップクラスのアカデミック・ジャーナルでも、マインドフルネスに関する研究論文は相当数あるぞ」

まったくの無知というわけではなかったにしろ、その類の研究論文をまともに読んだことがないのは事実だった。ヨーダが続ける。

「心の疲労の典型に燃え尽き症候群というのがあるじゃろ?それまで1つの物事に没頭していた人が、心身の極度の疲労により燃え尽きたように意欲を失い、社会に適応できなくなる状態じゃ。マインドフルネスは、こういう人たちにかなりの効き目を発揮することがわかっておる。

たとえば、ニューヨークの医師マイケル・クラスナーが発表した報告がある。70人の医師にマインドフルネスプログラムを施したところ、燃え尽きのサインである感情的疲労の症状が25%改善したという。

一方で、彼らのマインドフルネス習熟度を測定すると、20%の上昇が見られた。彼らの感情的疲労の改善と、マインドフルネス習熟度とのあいだには統計的に有意な相関性が見られたため、マインドフルネスが疲労を和らげた可能性は高い、というわけじゃな[*]」

* Krasner, Michael S., et al. “Association of an educational program in mindful communication with burnout, empathy, and attitudes among primary care physicians.” The Journal of the American Medical Association 302.12 (2009): 1284-1293.

私は自分の不勉強を恥じた。この論文が掲載されているのは、アメリカの臨床医学分野のトップジャーナルだ。2009年の時点でそんな成果が発表されていたとは……。

「ふぉふぉふぉ。いいか、マインドフルネスはただの瞑想マニアの娯楽ではないんじゃ。もはや、最先端の脳科学や精神医学が大真面目に研究する科学的休息法になりつつある。休息の方法がここまで真剣に議論されたことがあったかの?ないはずじゃ。その意味でこれは、現段階では科学的に裏づけられた最高の休息法だと言っていい」

(次回に続く)