世論調査をもとに
現実的なタイプ分けを考える
ここまで増田に有利な設定にすると、さすがに増田のボルダ得点が小池を凌ぐが、むろんこの設定は現実性が乏しい。そこで各種世論調査の概要をもとに、次のように設定を修正しよう(図3)。
[修正1]民進党や共産党の支持層の票が、少なからず小池に流れたようである。小池支持者のうち、控えめに見ても60万人は「2位を鳥越」にしていただろう。よってタイプAから、60万人を、タイプBに移行する。
[修正2]自民党支持層の票は、小池と増田で大きく割れたようである。増田支持者の179万3454人のうち、少なくとも79万人は「2位を小池」にしていたのではないか。よってタイプDから、79万人を、タイプCに移行。
[修正3]鳥越支持者のうち、与党を嫌う者は、増田よりは小池のほうがマシだと考えるのではないか。少なくとも鳥越支持者のうち34万人は「2位を小池」にしていたのではないか。よってタイプFから、34万人を、タイプEに移行する。
小池に厳しく、増田に甘くしても
小池が勝利する
以上3つの修正は「これくらいは成り立つだろう」という雑駁なものだ。おそらくかなり「小池に厳しく、増田に甘い」修正だが、雑駁ではなく緻密にやりたい方は、何かデータを見付けて(あるいは調査して作って)、同様の計算をされたい。
このように修正した設定のもとでボルダ得点を計算すると、小池が約1301万点、増田が約1297万点、鳥越が約1035万点となる。この程度の修正でさえ、小池はボルダルールのもとで勝利をおさめる。つまり都知事選で小池は「多数決という決め方だからこそ勝てた」わけではない。
ところでボルダルールと類似の投票方式に、島国ナウルの国政選挙で使われているダウダールルールというものがある。それは「1位に1点、2位に1/2点、3位に1/3点」と配点する投票方式だ。
ダウダールルールのもとだと、修正1はなくとも、つまり修正2と3だけでも、小池は勝利する(小池は約415万点、増田は約387万点、鳥越は約308万点。図4)。
以上、雑駁な議論ではあるが、都民の小池への強い支持を示唆する結果である。今回の都知事選では、およそ常識的に考えうる大抵の決め方のもとで、小池は勝利をおさめたのではないかと推察される。