「働き方改革相」の設置で、日本の働き方は変わるのでしょうか?

 安倍晋三首相は3日に行われた内閣改造・自民党役員人事で、「働き方改革」を担う特命担当相を新設。加藤勝信・1億総活躍担当大臣が、「働き方改革」担当大臣を兼務することとなった。安倍首相が今回目玉とも位置付ける「働き方改革」担当大臣だが、今後どのような具体的な施策をもって「働き方改革」が行われるべきなのか。

 現在における日本企業の雇用保障や年功賃金は法律で定められたものではなく、過去の高い経済成長期に普及した雇用慣行である。それが80年代までの日本の経済状況に良く適合し、欧米諸国が羨む円満な労使関係を築いた。この過去の成功体験が、90年代以降の大幅な成長減速等の経済環境変化の下でも、雇用改革を阻んでいることの主因である。

 本来、労使合意に基づいた日本の雇用慣行に、政府はなぜ介入しなければならないのか。それは労働者の利益を代表する筈の労働組合の組織率が2割以下に低下し、多様な労働者のニーズを十分に反映し難い状況となっているためである。現在、必要な改革とは既存の労働法の規制緩和ではなく、むしろ多様な労働者の利益を守るための新しいルールを作ることである。これを長らく放置してきた「労働行政の不作為」が問われている。

 例えば慢性的な長時間労働への規制は、労働組合の合意さえあれば除外される例外措置が一般化されている。また解雇に対する法的な規制が乏しく、裁判に訴えられるか否かで労働者が得る補償金額には大きな差がある。さらに雇用保障のある正社員とない非正社員との間には大きな賃金格差がある。これらは古くからある問題だが、90年代以降の低成長や女性の社会進出等の下で、その歪みが拡大している。労働者の特定の働き方を保護するのではなく、多様な働き方に中立的な立場から労働者の公平性を確保するためのルール作りが必要となる。労働法制だけでなく働き方に影響する税制や社会保険制度の改革も含めるべきだ。

同一労働同一賃金の法制化

 同一労働同一賃金のルール化は、これまで漫然と続けられてきた年功賃金等の慣行に対して、労働者間の「公平性」の観点から政府が介入する規制強化である。日本では特定の企業内で雇用が保障される正社員と、その雇用を守るために不況期に雇用調整される非正社員との間には大きな賃金格差がある。これは正社員の年功賃金によるもので、1000人以上の大企業の50歳代のピーク時には契約社員と比べて2.5倍の差がある。正社員の間でも大企業と中小企業、男性と女性社員との間の賃金格差も年功賃金カーブの差から生じている。