大きな声では言えませんが、PTAの役員はあらゆる手管を使ってでも断るべし!というのが働くママの一般常識だったりします。ご多分に漏れずわたしも、どうにか断れないかなあ、と悩みそうになりましたが、「ひょっとしたら、こんなことでもないと地域の事情に触れるチャンスもないかもしれないかな」という思いがふとよぎり、ごねらず引き受けることにしました。
こんな話をするとまるでPTAの広報誌に書かれている「経験者の声」みたいでアレですが、実際、経験してみると勉強になることがたくさんありました。親しいママ友も増えたし、こどもたちのいる環境を支えるシステムもすこし分かったし、何よりこどもたちは、ママが学校にしばしば行っていて校舎内で会ったりすることが嬉しいようでした。
ただ、誤解を恐れずに言えば、東京の小学校のPTAの活動において「地域に関わる」行為というのは、どうも必要性がぼんやりとしたことなんですよね。やらなくても別にいいじゃん?と思えちゃうこともたくさんあります。
商店街の餅つき大会ひとつとっても、そのための事前打ち合わせや、人数確保など付随してやることがいーっぱい。仕事の予定を調整して頑張ってつくる時間なのかなあ。でも、それをやる。そして、顔を合わせてごにょごにょ話すうちに、地域の人たちとちょっと仲良くなる。当日楽しみに並ぶ人たちを見て、ちょっと嬉しくなる。
次にこの商店街を通るとき、ちょっと仲良くなったお店の人と、ちょっと会話する。そんな経験が重なると、商店街はポーカーフェイスでさっさと歩く場所ではなくなり、
「こんにちは」
「あら久しぶり」
「こないだニイニくんがふらふらしてたわよ」
とあいさつのたびに足が止まる場所へと変化します。
たいていの地域環境維持は行政が担い、それらは税金で賄まかなわれ、ご近所トラブルさえも役所に訴えるという都市生活では、せいぜい餅つきや交通安全の旗振りなど形骸化した地域活動しか見当たらないといってもいい状態ではあります。
それでも、利用者の立場に甘んじていては見えないことが、見えてくるのは面白い。東京には「空気」を、三芳では「土」を、と無意識に求めるものを分けてきましたが、コンクリートの隙間に生える雑草のように、その土地にちょっぴりでもある土に根をおろしてみると、そこで見える風景もまた本質だったりします。
空気にただよう心地よさと危うさ、土に根を張る安堵感と面倒くささ。どちらも行きすぎると破滅の未来がありそうです。双方の要素を互いの環境に持ち込むことでバランスをとれないかしら、などと空気と土の化学反応を考えてしまう昨今です。
(連載終了)
この続きは、書籍『週末は田舎暮らし~ゼロからはじめた「二地域居住」奮闘記』でお楽しみください。