大学院のインターン場所は
鍵が5重にかかっている「刑務所」
松山 私は日本の大学を経験していないので比較ができないのですが、コロンビアの大学院時代のインターン生活が私には衝撃でしたね。ソーシャル(社会起業)専攻で、私はシニアの福祉などを学びたいと思っていたんですが、違う分野の体験をすることになったんです。
それは大学の方針で、わざとそういうことをさせるんだそうです。たとえば子どものケアをやりたいのに、老人施設に行かせるとか。
株式会社OBG CEO
新日本物流株式会社 副社長(Vice-president)
高校卒業後に留学、ロサンゼルスの短大を経てニューヨークの大学を卒業、その後コロンピア大学院でソーシャルビジネスで修士号を取得。帰国後、父の経営する運輸会社に入社。経営陣として運営に携わりながら社内情報インフラやCIの再構築、また対外的な広報・PR活動などを通じ古い体質の企業イメージの刷新。不動産業、システム開発から保守メンテナンスや廃棄処分までの輸送にまつわるサービスをワンストップで提供できる総合物流サービスを展開している。現在副社長を務める傍ら、企業の語学教育や輸出代行を主とする会社を起業、CEOとして活躍中。
山内 それは厳しいですね。
松山 それを知らなくて、私の派遣先は、なんと精神的な病を持った犯罪者が入所する「医療刑務所」だったんです。5回ぐらい鍵をあけないとたどり着けない、殺人罪とか重罪でみんな終身刑を受けて一生出られないような人のカウンセリングをするんです。もちろんドアは開けっ放しで安全は確保しているんですが…。スタッフはみな身体の大きな人ばかりで、その中でぽつんとアジア人で身体が小さい私は、殴られたりしたこともあって。
梅田 うわー、それはハードな体験ですね。
松山 ですからインターンは、毎日が苦痛でしょうがなかったです。大学側にも何度も違う場所への移動希望を伝えたんですがダメでしたね…。めったに経験できないこととはいえ、それがきっかけで、大好きだった心理学が嫌いになりました(笑)
山内 ええ!そんなに…。
松山 生半可な興味でやる仕事じゃない、と思い知らされました。もともと私は、明確なビジョンを持っていたわけではなく、自分が学んだ興味の先にキャリアがあると考えていたんです。
ですから、後から考えると、インターンを体験して興味をとことん突き詰めたおかげで、別の道へ進むきっかけをもらえたのは、今考えれば良かったように思います。
また、大学院で、「ソーシャル(社会起業)」と「ビジネス」のダブル専攻をしていたのが、今に活きていると感じています。「起業をしたい」と日本に帰国して思い、それを実行できたのも、大学院で勉強したことが役立っています。
青砥 そういえば、僕も大学入学時に描いていた脳医学の専門家になるという夢とは違う道を歩んでいますね。
山内 青砥さんは、メディカルスクールへの入学資格である「MCAT(通称:エム・キャット)」のスコアも持っていたのに、結果、医学の世界に進まなかったんですよね。そのことに未練はありませんか?
青砥 はい、それはまったくありません。今、自分の大好きな神経科学と、やりがいを本当に感じる教育を結びつけて起業しているので、普通の医者や研究者にならなくてよかったな、と思っています。恐らくぼくには全く向いてませんから(笑)。なので今は、アメリカで学んだことを少しでも世界の教育に還元できれば、と思っています。
山内 では次回は、みなさんの今のお仕事についてうかがいたいと思います。
つづく