「ついに投資の神様が日本株を買った!」――ウォーレン・バフェットが日本の総合商社5社に大金を投じていたことが判明した8月31日、商社株は一斉に上昇し、バフェットの影響力のすごさを改めて見せつけた。バフェットはそれまで見向きもしなかった日本株をなぜ買ったのか。どのような狙いがあるのか。アフターコロナの世界をどう見ているのか。そもそもバフェットとはどのような人物なのか。バフェットが推薦したことで世界中の投資家のあいだで話題の『バフェット帝国の掟』の日本語版の出版を記念して、2014年依頼、毎年バフェット率いるバークシャーハサウェイの株主総会に出席し、日本おけるバフェット研究者としても有名な、独立系運用アドバイザー尾藤峰男氏(びとうファイナンシャルサービス代表)に寄稿してもらった。連載2回目となる今回は、あまり知られていないバフェットと日本株との関係を紹介し、今後の動向について考察した。
(文中敬称略)。

バフェットが買った商社株は後追い投資してもいいか?2019年株主総会展示会場で、傘下企業デイリークィーンのキャンディをかじるバフェット(撮影:尾藤峰男)

「バフェットが買った」で丸紅の株価は14%の大幅高

8月31日、東京証券取引所の取引開始前、バフェットが日本の商社株を買ったようだというニュースが伝わった。取引開始後、5大商社株は一時、伊藤忠の6.5%上昇から丸紅の14%上昇まで大幅高。マーケットに衝撃が走った。

私は常日頃、バフェットが日本株を買わないことを残念に思っていた。日本のバブル崩壊以降の市場状況を見て、投資しても報われない市場とみているのだろうか。なにか日本を忌避する特別の思いでもあるのだろうかと勘繰りもした。次の株主総会で質問してみようかとも思ったものである。実際に中国では、中国石油天然気に投資して巨額の利益を得て売却しているし、バッテリーと電気自動車のBYDはいまでも保有している。また韓国の鉄鋼大手ポスコも保有していたことがある。

保有比率9.9%になるまで買い増す余地を表明!

そうした中、このたび初めての日本株への投資が明らかになった。バフェットは、バークシャー・ハサウェイの子会社を通した今回の商社株買いについて、次のようにバークシャーのプレスレリースでコメントしている。

「バークシャー・ハサウェイがこの度、日本と投資先として選んだ5社の将来に参画できてうれしい。これら5社は世界中にたくさんのジョイントベンチャーを持っているし、これからもこれらのパートナーシップは増えるだろう。将来、お互いの利益になるような機会があればと希望する」

バークシャー傘下には、エネルギー・電力、航空機部品、各種製造部品などの大手企業があり、日本の商社と協業できることを期待している面があろう。その意味では、バフェット後まで視野に入れているという見方もできよう。またプレスレリースの中で、保有株比率9.9%までの買い増しの余地があることを表明した。それを超える買い付けは、投資先商社の取締役会の了承を得てからのこととするとした。大変良心的なコメントである。

これを受けて、一部報道では、商社側はバフェットが何か言ってくるのではないかと、気にするようなコメントがあったが、それは杞憂だろう。この発表でもパッシブ・ホールディングといっているように、口は出さずにただ経営を見守るのが、バフェットの臨み方である。投資された側の商社にとっては、歓迎すべき株主ととらえるべきである。