住友ゴム工業がエコタイヤで攻勢をかけている。「低燃費タイヤ」に絞れば、現時点でブリヂストンを抜いてシェアトップ。2010年の低燃費タイヤの販売目標も、ブリヂストンの「エコピア」が300万本に対して、住友の「エナセーブ」は350万本を掲げている。ちなみに日本市場でのタイヤのシェアはブリヂストンが半分弱を握り、住友のシェアは4分の1程度しかない。

「うちは低燃費タイヤでは先行している」と同社の三野哲治社長は公言する。ライバルをあっと言わせたのが品揃え。「ミニバンクラスを発売しているのはうちだけ」と商品担当者は胸を張る。低燃費タイヤの品揃えを見ても、ブリヂストンの73種類に対して、住友は105種類と大きく引き離している。

 住友はカタログでも先行した。今年1月に始まったばかりの「低燃費タイヤ等の普及促進に関する表示ガイドライン」にのっとったラベリングを早々にカタログに入れ込んだのである。かたやブリヂストンはまだ間に合っていない。

 ラベル表示は、転がり抵抗が「AAA」から「C」までの5段階、ウエットグリップ性能(濡れた路面での止まりやすさ)が「a」から「d」の4段階で表示される。住友は普及価格帯に絞り込み数量勝負に出た。

「09年春に、ミニバン用低燃費タイヤを発売したところ、売り上げが5割伸びた。潜在市場は大きい」と、住友の幹部は期待を込める。

 もちろん、都心の自動車用品店のなかには「週末ドライバーにとっては、タイヤ交換が必要なほど運転はしていない」(店長)という冷ややかな声もある。しかし、低燃費タイヤで成功するかどうかが今後の明暗を分けるのは間違いない。

 というのも、12年からは欧州で環境規制が始まり、低燃費タイヤでなければ輸出できなくなるからだ。日本のラベリングは欧州の規制をも視野に入れたもの。低燃費タイヤの前哨戦に、まずは住友がシェア奪取に向けて動き始めた。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 大坪稚子)

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