男子校に多いリアルの学校説明会
まずは実際に来校して行われているリアルな学校説明会から見ていこう。先述したように、男子校が多いのだが、毎週のように開催されている巣鴨は別格としても、全体的には参加者数を絞る傾向にあるため、希望しても参加できないこともあるようだ。
どの学校でも最初に登場するのは理事長や校長である。特に校長は今の学校の雰囲気を体現する存在であり、難関・上位校では卒業生であることも多い。校長が何を話すかに加えて、どのように話すかによって、受験生の親子に与える印象は大きく左右される。フレンドリーでユーモアが感じられれば、学校も自由闊達(かったつ)な雰囲気なのだろうと想像できるからだ。
また、創立者でもある校長が全校生徒への講話を今でも続けている渋谷教育学園では、21世紀の学校を創るという理念が実を結んでいることを校長本人の口から語られるだけでも説得力が違う。
限られた時間内で何に重点を置いて語るのか。教育内容では、いわゆる先取り授業を行い、高3では入試問題を徹底的に演習するなどカリキュラムについて説明する学校が多かった。加えて、短期留学など国際交流に全員ではないが参加可能であるといった話には保護者の関心が強いことが会場の雰囲気からもはっきりとうかがえる。
学校教育の基本は授業である。「生徒が話を聞いてくれなくても静かにしろと怒りません。自分の授業を工夫します」という開成の教員の言葉は、生徒と共に成長していこうという意欲が強く感じられたし、説明時間の多くを教科ごとの授業の説明に費やした駒場東邦では教員が独自に作成した補助教材の冊子も展示していた。「うちは授業がとにかく面白いんだ」と言い切れる渋谷教育学園渋谷など、学ぶことの楽しさを前面に打ち出してくる学校には期待が高まるのではなかろうか。
学校の施設やその配置を確認することも、学校文化を理解する上で役に立つ。第三教育を掲げる市川は読書を大切に考えているが、校舎に入ってすぐ右手に朝7時から開いている蔵書約12万冊の図書館(第三教育センター)があることは学校からの明確なメッセージといえる。実験室が9つもある駒場東邦には理科大好き生徒が集まるのも合点がいく。駅の目の前にありながら大学と広大なキャンパスを共有する学習院中等科はグラウンドも充実しており、それが伸び伸びとした校風にもつながっていることがうかがえる。
感染防止の観点から、土曜授業を実施している学校でも生徒との接触は極力避ける傾向にある。それでも、すれ違うときに「こんにちは」と自然に言葉が出てくる学習院中等科や市川の生徒には好印象を持つことだろう。
会場参加者の雰囲気も学校選びの参考になるかもしれない。中学受験では母子で行動を共にすることが多いものだが、父親が卒業生という例が多いのか、慶應義塾普通部や開成では父子の姿が目に付いた。一方で、母子の参加が多かった駒場東邦や高輪などはお母さんの好きな男子校なのかもしれない。