Zoom授業で確保した双方向性

――1クラスは現在、何人くらいですか。

山本 小学生では10人以下から多くて20人ぐらい。平均13~14人ぐらいでしょうか。中学生だともう少し多くて25人を超えるようなクラスもあるので、平均すると20人近い。他の塾であったように、1対300というようになってしまうと、事実上の一方通行になってしまいます。ところが1対15程度だと、画面も1回スクロールすれば生徒全員の表情が見られ、十分双方向が成り立ちます。

 Zoomを導入してしばらくすると、保護者の方々から少し意外な、私たちにとってはうれしい声を多くいただきました。それは、「塾での授業がこんな熱のこもったものだと初めて知りました」とか、「今までは家でひとりで勉強していて、集中力なくダラダラとしていた子どもが、背筋を伸ばして緊張感を持って授業に臨んでいる」「『ハイ、ハイ』と手を挙げたり、褒めてもらってうれしそうにしている」といったことなんですね。たとえ自宅でも、ネットできちんとつながって、密度の濃い効果的な学習が進んでいくことを目の当たりにして、とても新鮮だったのだと思います。

――保護者の方の目は大切ですね。先生にも影響があったのではないですか。

山本 先生もいつもより準備に時間をかけて、Zoomに映りやすいフリップを用意などして、さまざま工夫をしてくれました。あの2カ月間で、常に保護者の方に「見られている」という緊張感があって、もしかしたら授業の質が向上したかもしれません(笑)。

 他の塾経営者の方からは「よくやれましたね。普通はなかなかすぐにはできないと思いますよ」と言われました。できない理由は大きく2つあって、一つは設備面がなかなか間に合わないこと。タブレットの必要台数が用意できないとか、Wi-Fi環境が整っていないとか。もう一つは授業が保護者の皆さんから見られて耐えられるものか、とてもではないが心配なこと、だというのです。

――素晴らしい授業であれば問題ないのですが(笑)。

山本 後から「そういえばそうだな」と思ったのですが、「もうやってしまえ」という感じでした(笑)。世の中が混乱している最中だったので、保護者の皆さんも温かく見守ってくれたのだと思います。感謝の言葉が多く寄せられて、とてもうれしかったです。