多士済々の在校生と卒業生

――学校の紹介ビデオを拝見しました。こちらの生徒さんたちは、いろいろなことをやってらっしゃいますね。

田中 最年少で行政書士試験に合格した生徒とか、国際化学オリンピック日本代表候補の生徒とか、食品ロス削減のフードドライブといった取り組みを自分たちで行っている生徒とか、サメの研究を熱心に行いメディアにも取り上げられた生徒とか。最近では、TBSの「東大王 全国クイズ甲子園2021 2時間SP」に出場し全国優勝したクイズ研究部の生徒や、国際地学オリンピックで日本代表として出場し、銀メダルに相当する『Very Good』を受賞、文部科学大臣表彰を受賞した生徒もいます。

 このような生徒たちは、先生たちがああしろ、こうしろというより、自ら主体的に学びに向かっています。それぞれの生徒たちの興味、関心に応じた積極的な取り組みを、私たち教員はサポートすることで彼らの活動を応援しています。

 また最近は、世界的な指揮者である西本智実氏とオーケストラの方々、東京大学医学部附属病院の先生方が栄東高校に来て、音楽学や科学、脳科学などの観点から講義を行っていただき、生徒たちとディスカッションをしながら共に探究する特別授業を展開しています。東大のグローバルサイエンスキャンパスにも生徒が盛んに応募しています。学校の教科のみならず、生徒たちはそれぞれの興味、関心のある分野の研究に積極的にチャレンジしています。そのような活動は、生徒の将来につながっていくこともあります。

――これらもアクティブ・ラーニングの成果だと。

田中 本校には本当にさまざまな分野に熱心に取り組んでいる生徒が多くいます。鉄道研究部の活動も盛んで、部員の中には駅メロを全部録音してきてチェロでそれを再現する生徒がいます。「将来何になりたいの」って尋ねると、「軟弱地盤の研究をして、トンネル工事の技師になりたい。だから、工学部に行きたい」と。いまの自分の興味、関心を突き詰めていくとそこに大学の学問があり、その先には将来の仕事があるのですね。

 すべての教科、領域で表現力と思考力と判断力を早い段階でつけておくこと。その過程を経て培った学問の基礎力が、やがて自己実現するときの力になります。

――生徒の考えがはっきりしていますね。

田中 数年前に仕事でニューヨークに行ったんです。ケネディ空港でレンタカー待ちをしてたら、「先生、何しているの!?」と高校を卒業したばかりの8人組に声を掛けられました。 

 何を言うのかと思ったら、「先生、Google本社まで連れて行って。将来自分たちのおカネで先生を雇ってあげるから(笑)」と言うのよ。ニューヨークは東海岸で、Google本社は西海岸でしょう。

 ちょうど教え子がGoogleで働いていたので、一緒に行きました。そうしたら、その卒業生たちの中の1人がGoogleの社員に、「僕は起業家になりたいので、ここでアルバイトさせてください」って言い出して。言われた方も驚いていたようでしたが、その場で承諾してくれましたよ。私も驚きました、そんな縁で人生って大きく変わるのだなって。その生徒は、後に本当に起業家になりました。

――すごいお話ですね。

田中 本校での経験が、卒業後も彼らの行動力につながっているのかなと思いました。