美術の課題で各自が制作したステンドグラス風の絵が教室や廊下の窓にたくさん貼られ、クリスマスの時期は一段と華やかになる

井手雅彦(いで・まさひこ)
学校法人横浜学院常務理事・副学院長

1954年香川生まれ。慶應義塾志木高校、慶應義塾大学経済学部卒。三井銀行(現・三井住友銀行)入行、大学の第一外国語であったドイツ語を生かし、留学を含め2度のドイツ駐在を経験。2006年10月より、取引先でもあった学校法人横浜学院に入り、横浜女学院中学校高等学校副校長に就任。07年から校長となり、15年から現職。

 

大学側の“アドミッションポリシー急変”で始まった取り組み

横浜女学院では例年5割ほどの卒業生が指定校枠などを活用して学校推薦で進学している。指定校枠を合計すれば卒業生数を大きく超えるが、そのうちのいくつかの大学とは高大連携契約を結び、さらに踏み込んだ関係づくりを進めている。

――入り口に「入試対策説明会」とあり、保護者の方が階段を上がっていきましたが。

平間 新型コロナ禍で1回当たり15人までに絞っていますが、ここのところ毎日、入試の説明会を実施しています。どの学校も人が押し寄せているようで、受験生の保護者は情報収集に躍起になられている感じがします。

[聞き手] 森上展安(もりがみ・のぶやす)
森上教育研究所代表。1953年岡山生まれ。早稲田大学法学部卒。学習塾「ぶQ」の塾長を経て、1988年森上教育研究所を設立。40年にわたり中学受験を見つめてきた第一人者。父母向けセミナー「わが子が伸びる親の『技』研究会」を主宰している。
*森上教育研究所 「わが子が伸びる親の『技』研究会」では実力アップ「差がつく単問」集中講座 など受験生と保護者向けに教材動画を販売しています。詳しくはこちらをご参照ください。

――それは大変ですね。大学入試も総合型(旧AO)や学校推薦型の選抜入試で年内に合格を得ようという動きが強まっています。高大連携に熱心な貴校にも、その現状をお話しいただければと思います。

井手 指定校の推薦枠というものは以前からありました。本校はキリスト教学校教育同盟の一員で、2000年以降加盟している大学から優先入学の仕組みの中に入れてもらっていました。

 ところが、私が校長になった08年に、毎年10人ほどが進学していた準難関大学からの受け入れが突如急減したのです。私も驚きましたが、保護者の方も、確か7~8人だったと思いますが、びっくりして問い合わせのために来校されました。

 同じ年、いくつかのキリスト教主義の女子中高一貫校がその大学と教育連携を始めたこともあり、本校の優先入学が急に削られたのではないかと。その大学に行くために努力してきた生徒にとっては青天の霹靂(へきれき)です。

――大学にしても、少子化で18歳人口が減少する「2018年問題」が叫ばれ、学生募集に危機感を抱き始めた頃ですね。

井手 大学に対する中高側からのハードルが高いなと感じていたので、「進学研究会」を立ち上げました。最初は21大学(うち9女子大)から始め、大学の募集担当者や教授から話を聞いていきました。

 そして、銀行時代のつながりも活用しながら、MARCHや有名女子大などを訪問、指定校枠の交渉を始めました。その頃すでに大学でドイツ語は絶滅危惧種でしたので(笑)、私のドイツ語の先達や知人に呼びかけて、上智大(外国語学部ドイツ語学科)や立教大、中央大、法政大や学習院大の推薦枠も確保していきました。関わっていただいた方には、本当に感謝です。

――リーマンショックの頃ですが、最初はどちらの学校から反応がありましたか。

井手 成城大と日本女子大から2枠ずつ確保できました。このことについて、両大学にはいまでも大変感謝しています。その後も安定的に進学が続いたこともあり、現在は成城大9人、日本女子大7人まで学校推薦枠が増えています。

 関東学院大27人、玉川大24人、東洋英和女学院大20人、青山学院大(キリスト教学校教育同盟推薦を含む)15人をはじめ、合わせると卒業生の数よりも多い指定校推薦枠があるので、最近は、卒業生の5割程度がこうした学校推薦枠を活用して進学しています。

山手の丘に配置された校舎からは関内から北側に向けた風景が一望できる(上部を横切るのは新館と結ぶ通路)