頭をかかえるビジネスパーソン写真はイメージです Photo:PIXTA

現代日本社会ではメンタル不調者が急増中だ。現代の日本ではメンタル不調による休職者や退職者がでている事業所の割合は10%を超えているという。彼らの実情に迫ると、自らのメンタルコントロールが得意な上司からは誤解され、家族や友人に相談しづらい環境に身を置き、さらに「休んでいる間に治さなければいけない」という切迫感で自分を追い込んでいる現状があった。500以上の企業のメンタルケアサポートを担当してきた株式会社Smart相談室CEO・藤田康男氏が、静かに病んでいくメンタル不調者の真実を語る。※本稿は、藤田康男『社員がメンタル不調になる前に 会社の責任?それとも……?』(日本能率協会マネジメントセンター)の一部を抜粋・編集したものです。

「こころのかぜ」と言われても
じつは風邪のようには治らない

 危機感を煽るようなことをお伝えします。それは、メンタル不調は、風邪のようには治らない、ということです。

 風邪であれば、少し休養をとり、お薬を飲むことにより、1週間程度で健康な状態に戻ります。しかし、メンタル不調はすぐには治らないのです。また、治ったとしても、心理的には付かず離れず、一生その病気と付き合っていくことになります。

 よく、うつ病は「心の風邪」などと言われますが、決して風邪のようなものではなく、もっと中長期的に治療が必要なものです。

 仮に、職場でメンタル不調による休職者が発生した場合を想像してください。

 その休職は数日の休暇では対応できませんから、休職制度が適応されます。そして、短くて1カ月、多くの場合は数カ月単位の休職期間が設定されるはずです。

 参考までに、独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査によると、企業ごとにおける病気休職制度の休職期間の上限は、「6カ月超から1年未満まで」が22.3%でもっとも割合が高く、次いで「1年超から1年6カ月まで」が17.2%などとなっています。

「1年6カ月超計」(「1年6カ月超から2年まで」「2年超から2年6カ月まで」「2年6カ月超から3年まで」「3年超」の合計)は26.1%、「上限なし」は4.5%という調査結果(*1)が公表されています。

(*1)独立行政法人労働政策研究・研修機構「メンタルヘルス・私傷病などの治療と職業生活の両立支援に関する調査」
図表:病気休職制度の休職期間の上限同書より転載 拡大画像表示