
上久保誠人
第94回
18日安倍首相が消費税再増税を延期し、その是非を問うために総選挙に踏み切る考えを表明した。誰も実質的に反対していない政策を「総選挙の最大の争点」とする珍妙さ。圧倒的多数を持つ安倍政権が総選挙に打って出る日本の政治は「複雑怪奇」だ。

第93回
小渕優子経産相が、政治とカネの問題で辞職した。この問題を契機として、政治資金に関する規制を厳しくする流れが強まっていくことは間違いないだろう。だが、規制を厳しくすれば万事解決するといえば、事はそう単純な話ではない。

第92回
ノーベル物理学賞受賞によって、中村教授の「怒りの発言集」がクローズアップされることで、気になったことがある。それは、安倍政権の登場後、「改革が進んでいない!」「手ぬるい!」と厳しく批判する「改革派」が消えてしまったことだ。

第91回
香港で民主化デモが続いているが、中国政府がそれほど大きく譲歩する可能性はほとんどない。だが、今回の香港民主化デモが無意味なものとなるかといえば、筆者はそうは思わない。必ず、中国の将来に重大な意義を持つものになると考える。

第90回
筆者は最近、エネルギー産業を主要産業とするロシア・サハリン州、モンゴルを調査し、民主化問題を抱える香港からスコットランド独立の住民投票を観てきた。今回は、ロシア・サハリン州の現状報告から入り、スコットランド独立について論じたい。

第89回
本格的な日本経済復活のためには、「第三の矢(成長戦略)」が重要だ。それには、公共事業を削減して斜陽産業を退場させる産業構造転換の断行がカギとなるが、今回の内閣・党役員人事でその「改革」は可能だろうか。

第88回
ザッケローニ監督の誤算は、本田らワールドクラスの選手たちの「予想を超えた勤勉さ」だったのではないか。筆者は監督の指導の「失敗」から、日本の大学における欧米スタイルの教育導入の「失敗」を連想してしまう。

第87回
成長戦略を立案しただけでは、改革は実現しない。政策は「政治」という複雑な過程を通らなければ実現しない。しかし、安倍政権は、成長戦略が政治という過程を乗り越えるための「仕掛け」を全く作れていないと考える。

第86回
日本はTPP交渉で国際競争力の弱い農業は保護を、圧倒的に強い製造業では関税撤廃を志向している。だが、中国の台頭などで国際関係が難しさを増し、さまざまな国との協力関係を築かねばならないなか、先進国として「国益」だけを論じていていいのだろうか。

第85回
さまざまな専門家による「集団的自衛権行使容認と抑止力」の議論から、1つ気がついたことがある。それは、この議論に参加しているのが、集団的自衛権行使を原則的に容認する「肯定派」の論者ばかりだということだ。

第84回
ウクライナ問題で欧州での天然ガス・パイプライン・ビジネスがリスクとなったロシアは極東へ向かい始めた。中露が接近し、日米欧を強烈に牽制する共同声明を発表したが、ロシアの「本音」は別のところにある。

第83回
安倍晋三首相が「集団的自衛権行使容認」に向けて本格的に動き出した。記者会見で、何度も「国民の命を守る」と繰り返し、「熱弁」を振るった。しかし、その内容は驚くほど「空虚」だった。

第82回
この連載では、安倍首相の政治姿勢を、指導力も政治力も発揮されておらず、誰も反対しない政策の羅列であるとして批判し続けてきた。その陰で、さまざまなアクターが有利に物事を進めようと、したたかに行動している。

第81回
先の日米首脳会談で、安全保障に関して安倍首相は「満額回答だ」と会談の成果を強調したが、この点に関しては今回の首脳会談は決して難しい交渉ではなかった。オバマ大統領は、「尖閣諸島は米国の防護義務対象」であると言わざるをえない状況だったからだ。

第80回
安倍首相は政権発足時から、「やりたい政策」しか眼中になかったのではないだろうか。安倍政権の経済政策・アベノミクスとは、高い内閣支持率を維持して「やりたい政策」を実現する環境を作るために、行われてきたものだということだ。

第79回
近頃、「保守派」の様々な言動が、国際的な批判を浴びるようになっている。そこには、先ごろ人種差別的横断幕で問題となった浦和レッズのサポーターとどこか共通する、自分たちとは異質な人たちと接する「経験」の不足があるように思う。

第78回
今回は大学生の「就職活動(就活)」について書いてみたい。「上久保ゼミ」でも、3回生15人が年明けから一斉に就活に入っている。学生にとっては迷惑なことだと思いながら、彼らに積極的に話しかけてみて、就活の現状を確認してみた。

第77回
ウクライナ情勢を巡って、ロシアと欧米の対立が深まっている。欧米の経済制裁はロシアを止めることができるか。親欧米派か親ロ派か、どちらが最終的に政権を獲得するか。あるいは、国家分裂の動きが強まってしまうのか。ウクライナ情勢の今後を読み解いてみたい。

第76回
舛添知事は、都知事就任後初の定例記者会見で、いきなり「反自民」「反安倍」の姿勢を示して驚かせた。自民党の憲法改正草案について「立憲主義の観点から問題がある。今のままの草案だったら、私は国民投票で反対する」と厳しく批判したのだ。

第75回
一般的に、ナショナリズムは国家間の関係を悪化させる要因だと考えられがちだ。だが、本稿ではナショナリズムが国家間の紛争回避のために、実は「必要悪」なのではないかという主張を展開する。
