2015.5.28
高い成長率は原油安の効果でありアベノミクスの成果ではない
2015年1~3月期の成長率は、予想を上回る高い結果となった。しかし、その内容を詳しく見ると、原油価格下落の影響が大きいことが分かる。インフレ目標の成果でも、また消費税増税の影響が薄れたためでもない。
一橋大学名誉教授
1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『1940年体制―さらば戦時経済』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』『仮想通貨革命』『ブロックチェーン革命』など。近著に『中国が世界を攪乱する』『経験なき経済危機』『書くことについて』『リープフロッグ 逆転勝ちの経済学』『「超」英語独学法』などがある。野口悠紀雄ホームページ
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2015.5.28
2015年1~3月期の成長率は、予想を上回る高い結果となった。しかし、その内容を詳しく見ると、原油価格下落の影響が大きいことが分かる。インフレ目標の成果でも、また消費税増税の影響が薄れたためでもない。
2015.5.21
世界では、コストの低下によりスマートフォンの利用が急増し、それを用いた新しいサービスが次々と登場している。それらは、われわれの日常生活を大きく変える半面で、既存のビジネスに多大な影響をもたらす。
2015.5.14
日本は先進国の中でも起業率が著しく低い。その一因が、米国のようなベンチャーキャピタルが存在しなかったことだ。IT企業をはじめとする新しい事業分野を育てた米国のベンチャーキャピタルとは、いかなるものか。
2015.5.7
アメリカ経済を牽引しているのは新しい産業である。個別企業の観点から見ても、IT関連をはじめとする先端企業が高い成長を続けている。対して日本では、いまだに伝統的企業が規模を大きくする方向での生き残りを目指している。
2015.4.30
為替市場ではドル高が続いている。日本とユーロが金融緩和政策を続ける一方でアメリカが金融緩和から脱却しつつあるためだが、問題は「なぜアメリカだけが脱却できるか」だ。それは、同国の実体経済が強いからである。
2015.4.23
日本経済をドル表示で見ると、普段は分からないことが見える。GDPや輸出は大幅に減少し、企業も売上高は減少、営業利益は微減だ。その中で株価だけが上昇している。これはバブルとしか言いようがない。
2015.4.16
金融緩和政策の効果として本来期待されるのは、投資や輸出の増である。しかし異次元緩和政策導入後、いずれも増えていない。これらの効果がなければ、単にバブルを煽っただけと評価せざるを得ない。
2015.4.9
異次元金融緩和政策は、実体経済に関する期待には影響していない。先日発表の日銀短観で見ると、企業の景気見通しはむしろ悪化している。それを反映して、設備投資の計画も全体では減少だ。
2015.4.2
日銀が異次元金融緩和政策を導入してから2年がたった。現時点でその総括は是非とも必要だ。結論を言えば、円安をもたらして株価を上昇させたが、実体経済には影響を与えることができなかったということである。
2015.3.26
2015年の実質賃金上昇率は、14年比で3.1ポイント上昇になると予想される。ただしこれは原油価格下落でインフレ率がマイナスとなるためで、15年の賃上げが格別大きいのではない。日銀が言うのとは逆のことが生じているのだ
2015.3.19
昨年以降、アメリカの金融緩和終了によって、金融・為替市場は大きく変化した。では、円安は新しい安定的均衡なのか? そうは言えない。円安が進行する条件には、かなりの無理が含まれているからだ。
2015.3.12
消費者物価はここ2年ほどの間に円安で上昇し、昨年秋からの原油価格下落によって下がっている。これらの動きは、実質所得や実質消費にどのような影響を与えているか? 今後の実質所得はどうなるだろうか?
2015.3.5
日経平均株価がリーマンショック前のピークを超えた。だが製造業の利益はリーマンショック前を下回っており、また利益増は一部大企業に限られる。伸びているのは非製造業だが、これはアベノミクスとは無関係だ。
2015.2.26
いま世界経済は新しい時代に入りつつある。その象徴が、米国の金融緩和の終了と原油価格の下落であり、いずれも「投機の時代」の終了を示している。日本はこの新しい世界に適合できるだろうか? その条件は、金融緩和を終了させることだ。
2015.2.19
2014年10~12月期の成長率は、3四半期ぶりにプラスに転じた。これは消費者物価が下落し、消費支出が回復したためである。つまり、「物価上昇率2%」の目標が、誤りであることを示している。
2015.2.12
前回に引き続き、トマ・ピケティの所論を日本に適用して検証する。今回は法人企業統計のデータを基に分析した。結論として、日本経済はやはり彼が示した所得格差拡大のメカニズムが当てはまらず、むしろ標準的経済モデルの示す姿が近い。
2015.2.5
トマ・ピケティは、これまでは制度的な要因に影響を受けると考えられてきた所得格差拡大のメカニズムを、簡単なマクロ経済的関係で説明したことで大きな話題を呼んだ。しかし彼の所論は、日本の場合には当てはまらない。今回はそのことを示す。
2015.1.29
1月22日、欧州中央銀行(ECB)が初の量的金融緩和を決定した。これによりユーロ圏の経済状況が好転すると期待されているが、果たしてそうした効果が生じるのだろうか?
2015.1.22
現在、世界的な投機資金の流れが大きく変化している。それが、原油価格、為替レート、株価などを揺さぶっている。また、異常とも言える金利の低下現象が世界的な規模で起きている。なぜこうした動きが生じたのか?
2015.1.15
経済学の教科書では、円安になれば輸出が増加し、輸入が減少し、貿易赤字が縮小するとされている。しかし、実際にはそうなっていない。基本的な原因は、為替レートの変化にもかかわらず、輸出輸入量が一定であることだ。なぜ輸出は増えないのだろう…
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