野口悠紀雄
第69回
イギリスの株価は、離脱直後の落ち込みから回復し、現在、年初来最高値を記録している。一方、大陸諸国の株価は6月前半より低い水であり、離脱はイギリス経済にとって有利であることを示している。

第68回
「イギリスのEU離脱は経済的に不合理な決定であり、世界経済を混乱させる望ましくない決定だ」とされることが多い。しかし、この議論は大いに疑問だ。とくに、金融活動について、イギリスの離脱には十分な理由がある。

第67回
参議院選挙における大きな争点は、アベノミクスの評価だ。さまざまな経済指標について、安倍晋三内閣発足直後と現在とを比較してみよう。

第66回
三菱東京UFJ銀行が国債の入札における「プライマリー・ディーラー」の資格返上を検討中と報じられた。これは日本の金融政策の行き詰まりを象徴するもので、今後の金融情勢に大きな影響を与える可能性がある。

第65回
厚生労働省が先日発表した4月の全国の有効求人倍率は、3月から0.04ポイント上昇して1.34となった。しかし、内容を分析すると、人手不足の深刻化であり、賃金が低い分野での超過労働需要であることが分かる。

第64回
安倍首相は消費増税の見送りを表明した。世耕官房副長官は後に否定したが、その理由に「世界経済がリーマンショック直前のような状態にある」ことを挙げている。だが、現状はまったく異なる。

第63回
消費停滞の原因は、消費税増税ではなく、実質賃金の下落であり、日本が長期的にマイナス成長に落ち込んだ可能性を示す。これは、財政拡大によって解決できるものではなく、規制緩和による新技術の導入が必要だ。

第62回
マイナス金利の影響は徐々に浸透していると言われることが多い。しかし、実態はマイナス金利の影響ではなく、物価上昇率の見通しが低下していることによるものと考えられる。

第61回
現在、先進諸国が直面する問題は、財政拡大や為替操作のような短期的マクロ政策では解決できない。世界経済の現状についての的確な理解の下に、構造改革の重要性を認識することが必要だ。

第60回
フィンテックでもっとも重要と考えられているのは、ブロックチェーン技術の応用だ。ビットコインなどの仮想通貨の基礎技術であり、金融産業が将来大きく変わることを予感させる。

第59回
タックスヘイブンの問題は複雑である。パナマ文書問題をきっかけに、税制の公平化を前進させるには、問題の所在を正確に把握する必要がある。

第58回
急ピッチで円高が進んでいる。投機資金の動向は円高を期待する方向へと大きな変化が生じており、実際のデータで確かめることができる。本格的な円高再来に日本企業は備えるべきだ。

第57回
政府は緊急経済対策を講じ、消費喚起を図る予定だ。さらに消費税増税の再延期も検討されている。しかし、消費が停滞するのは構造的な要因によるものだ。したがってそれらの政策でも増加しないだろう。真に必要な方策とは何か。

第56回
マイナス金利はREIT価格を急上昇させた。ただし不動産価格上昇は局所的だ。マイナス金利が長期継続し、預金金利もマイナスになるような事態になれば、大都市の優良物件に投資資金が集中し、二極化現象が拡大する可能性がある。

第55回
マイナス金利の目的は、企業の投資を増加させることだとされているが、果たしてそれは本当なのだろうか?筆者はむしろ、余った資金が設備投資に向かわず、不動産バブルを引き起こすことを懸念している。

第54回
マイナス金利導入は投資を増大させるためとされている。だがインフレターゲットやマイナス金利はもともと多くの問題を抱えている。最も大きな問題は、実質収益率がマイナスである投資も正当化し、経済の縮小均衡を加速させることである。

第53回
安倍内閣は春闘に介入し企業に賃上げを要請してきた。しかし仮に要請通りの賃上げに成功しても、現在の日本経済の構造では、全体の賃金所得増にはあまり寄与しない。問題解決には生産性の高い新しい産業が登場するしかない。

第52回
現在の市場・経済状況を背景として、緊急経済対策が必要との議論が生ずる可能性が高い。本当に重要なのは構造改革だが、緊急対策がどうしてもとられるのであれば、その内容をいくらかでも望ましいものに近づける必要がある。

第51回
仮想通貨の基礎技術「ブロックチェーン」に対する関心がにわかに高まっている。日本の銀行や取引所も次々と実証実験を開始。その応用によって金融取引の形は大きく変わる。マイナス金利がこうした動きを加速する可能性もある。

第50回
実質GDPマイナス成長の原因は消費の落ち込みであり、もっと基本的な原因は実質賃金が伸びないことだ。原油価格が大幅に下落する中で、本来これはありえない。ここに、アベノミクスの基本的な問題点が露呈している。
