
柊 宏二
2008年のリーマン・ショック時と比べ、景気悪化にもかかわらず、株価が堅調な理由の1つとして、金融システムの安定が挙げられる。しかし、日本のメガバンクの21年3月期第1四半期決算は、現在の金融の安定が砂上の楼閣だと思わせる不穏な内容だ。3メガバンクの連結与信費用(21年3月期第1四半期)は、合計で約3,000億円となり、来期も与信費用が高水準で推移するリスクがある。与信費用の増加でメガバンクが軒並み赤字に転落し、利益が水面下に沈む「銀行沈没」が起きる可能性はあるのか。

安倍首相はアベノミクスで、強力な金融緩和による円安と輸出企業の収益回復を実現した。また、トランプ米大統領と良好な関係を築き、日本製品に対する関税強化を防いだ。こうした功績を残した安倍首相の退陣により、日本株市場の先行きを心配する声もある。しかし、日本株市場は早晩持ち直し、2020年後半から21年にかけて上値を追う展開になると見る。その理由を、日本景気や企業業績の先行きなどから解説しよう。

7月末の日経平均株価終値は、2万1710円へと下落。新型コロナの感染拡大や円高を受け6日続落となったが、ドル建て日経平均株価は、7月最終週に年初来高値水準に迫った。今後も変動の大きい展開が続きそうだが、当面の日本企業の業績は意外に底堅く善戦するのではないか。DXなどの新たな需要、中国景気の回復、コスト体質の強化といった日本企業を取り巻く環境を整理し、予想EPSと予想PERから、これから来年にかけての日経平均株価を展望する。

新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、社会構造が短期間で大きく変化している。株式投資家は銘柄選びの際に、社会構造の本質的な変化が中長期な逆風となる分野と、反対に追い風となる分野を見極めていく必要がある。新型コロナによって新たな投資チャンスが生まれるのは、どんなテーマや業界だろうか。

新型コロナウイルスの感染拡大で、資金繰りに窮する企業が続出し、銀行には融資要請が殺到している。最近鈍化気味だった国内銀行の貸出残高の伸びは、今後大きく増加することが見込まれる。一方、大手行を含めた銀行株のPBRは0.3倍程度と、東証1部平均を大きく下回っている。しかし、このような低い評価は行き過ぎだ。銀行株を投資対象として改めて評価してみよう。

新型コロナの影響拡大を受け、世界経済の景色は一変した。世界中で感染が拡大し、小売、飲食、観光、運輸、娯楽などのサービス関連の業種が大打撃を受けている。現時点では、ベストケースでも「U字(緩やかで相応の時間を要する)回復」で、失業や倒産で経済基盤が損なわれた場合や、移動制限の影響が残り続けた場合には、回復がさらに緩やかな「(ひらがなの)しの字回復」となるリスクがある。変わったのは世界経済だけでなく投資環境だ。今までとは違う投資戦略が求められる。

昨年10-12月期の法人企業統計では、一部を除く全産業が減収減益となった。さらに、新型肺炎の影響が直撃する今年1-3月期は、リーマンショック後に匹敵する減収に陥る可能性もある。とはいえ、日本企業の収益力はここ十数年間で向上している。労働分配率の低下と配当増の傾向が続く環境を想定した場合、日本に住む我々が考えるべきは株式投資ではないか。

マイナス金利政策の先輩であるスウェーデン中央銀行は、家計債務の膨張という副作用を主因に、マイナス金利政策からの脱却を先に決めた。マイナス金利政策は百害あって一利なしで、プラス効果がない上に副作用が多く、副作用も危険なレベルに達しているとみている。日銀によるマイナス金利政策の弊害を考察する。

筆者は今年(2020年)の日本株が一段高を目指すとみているが、株式相場には当然リスクが伴う。20年に発生する可能性が高く、発生した際に日本株市場に大きな負の影響を与えると筆者が考える5つのリスクを解説する。

日経平均株価は2019年後半に大きく上昇した。予想する上で有効と思われる分析方法を示しつつ、2020年にかけても日経平均株価は一段高を目指すかを展望しよう。日経平均が3万円を超えるのは、果たしていつのことだろうか。

ドイツの実質GDPは2四半期連続でマイナス成長となり、欧州経済の優等生と言われたドイツ経済が苦境に陥っている。主な要因は自動車産業と銀行業の苦境だが、とりわけドイツ最大の銀行であるドイツ銀行の経営悪化は深刻だ。ドイツ銀行の経営悪化が発端となり、金融で膨らんだ相場が「金融で終わる」展開になる可能性はあるのか。

香港の混乱は止まらず、中国による統一への危機感は台湾に飛び火している。一方、中国・上海は治安が良く、外国人観光客が多数訪れている。習近平主席の人気は高い様子で、背景には経済発展の継続が考えられる。足元の中国景気は厳しいが、実質GDP成長率は依然として6%を超えているなど、中国市場は依然として魅力的だ。日本は中国とどう付き合うべきか。

景気循環と太陽の黒点数の増減が連動するという「太陽黒点説」というものがある。足もとでは太陽黒点数が非常に少なく、日本では消費マインドの悪化が目立っている。前回の消費増税前と10月の消費増税を控える足元の消費マインドを比べると、足元の方が水準が低く、このまま消費増税を迎えると日本景気が崩壊する恐れがある。日本経済を活性化し景気を浮揚させるために、財政政策や金融政策に頼るのはもはやナンセンス。地道に潜在成長率を高める施策を積み重ねることが重要だ。

米中貿易摩擦の先行き不透明感は強いままで、短期で解決するとは期待しにくい。このため世界の製造業企業は、生産拠点を中国から他国へ移管させる動きを見せており、有力な移管先としてベトナムがある。ベトナム経済は、中国からの生産拠点の移管を背景に今後も高成長が続くとみられ、米国との貿易摩擦は中国ほど深刻化しないと考えられる。ベトナム株は、同国経済の高成長を背景に中長期的に見た上昇余地があると考えられる。

インド株は、中国株と異なり堅調で、足元では過去最高値圏に浮上している。インド株は、中国と異なり米国との間で強い貿易摩擦が生じているわけではない。また、生産年齢人口は今後も増え続け、経済成長に対する期待も強い。年初のインド経済は冴えなかったが、第2次モディ政権が打ち出す景気対策を背景に、今年後半は回復が期待される。日本の投資家にとって、拡大するインド経済の成長の果実を中長期で取り込んでいくことは、有効な選択肢の1つになり得る。

再燃する米中貿易摩擦の影響で、回復期待のあった中国経済の先行きにも再び暗雲が漂っています。しかし、中国の経済統計は、信憑性に難がある。最前線でビジネスをする日本企業の動向こそ、中国経済の「真の姿」を読み解くカギになる。

新年度に入り株式相場は堅調に推移するなか、銀行株は上値の重い展開となっている。今後の金利上昇や金融機関の利ざや改善への期待が醸成されにくい状況になったためだ。修正幅が特に大きかったみずほをはじめ、今後注意すべきは減損損失リスクである。
