「何かに熱中したい」「自分にしかできないことを見つけたい」けれど、「何に『人生』を賭ければいいのか」がわからない。そんな全人類共通とも言える悩みに、著書『一生を賭ける仕事の見つけ方』で1つの答えを示した若きプロフェッショナルがいる。起業家の登竜門「モーニングピッチ」発起人で知られる斎藤祐馬氏だ。
これまでの連載で、自分の人生を本気で生きるためのミッションやマインドについて明らかにしたが、果たして「そうした思いを仕事につなげる」には何が必要なのか。実は組織になかで働く人にも重要だという「ビジネスモデル」について、3つのポイントと今急成長中のサービス「メルカリ」のケースを解説してもらった。

「ビジネスモデル」の3つの柱
――マーケット・差別化・チーム

「ビジネスモデル」を組み立てるうえで、絶対に外してはいけない3つの柱がある。

「マーケット」、「差別化」、「チーム」の3つだ。

 これから挑もうとしている新規事業には、一定の売り上げとその後の成長を見込める「マーケット」があること。

 そして、そのマーケットで自分たちを競合他社から「差別化」する戦略や独自技術があること。

 さらに、「(経営)チーム」を構成するメンバーは、その戦略を遂行できる力を備えているとともに、それぞれのメンバーが各人のミッションにもとづき、どんな困難をも乗り越えていく本気度(コミットメント)でこの事業に取り組んでいること。

この3つの要素をはっきりと示せれば、それを見た人の理解と共感を得られるはずだ

 この3つが「ビジネスモデル」の〈肝〉だと僕が確信したのは、ベンチャー支援のためにベンチャーキャピタル(VC)の人たちと交流を続けてきたからだ。

 資金集めに奔走するベンチャー経営者の力になろうと、ベンチャー経営者とVCの「オミアイ」をセッティングしたこともある。だが、すべてのベンチャーがVCから投資を得られるわけではない。VCから断られるベンチャーも少なくない。その違いがどこにあるのか、VCの人たちに尋ねていくと、この3つの柱に集約されることがわかってきた。

 そもそも「マーケット」に可能性を感じられなければ、投資の対象になるはずがない。マーケットは魅力的だとしても、目の前のベンチャーが、そこでどう「差別化」するかが見えてこなければ、やはり投資の決断をくだせない。さらには、2つの基準をクリアしたとしても、実際に実行力を担保する「チーム」のメンバーに力や本気度が足りないと感じれば、やはり投資は難しい。ベンチャーが投資を得るには、これら3つの要素を兼ね備えていなければならない、とVCの人たちは口を揃えて言う。

この教訓がすごいのは、ベンチャーだけに当てはまるわけではないことだ。「ビジネスモデル」の必要性は、大きな組織のなかで新規事業を立ち上げる際にも当てはまる。

 大企業が取り組む新規事業でも、「マーケット」がなければ成長を望めるはずはないし、「差別化」のポイントがなければ、競合との戦いを勝ち抜けるはずがない。「チーム」の要素も同様で、関わるメンバーに力と本気度があると認めてもらえなければ、新規事業に上司や経営陣のゴーサインが出るはずがない。

 組織のなかで新規事業に挑むには、自分は「起業家」だという心構えとスキルを身につけることが重要だ。なぜなら、組織のなかの「起業家」が口説くべき「投資家」は、社内の上司や経営陣だからだ。組織に新規事業を認めさせ、その後も協力を得つづけるために、3つのポイントを押さえた「ビジネスモデル」を組み立てる必要がある。