いわゆる銀行窓販で投資信託が順調に売れている。

 いまや銀行は証券会社を抜いて、投資信託販売の主役といっていい。証券会社的な感覚で見ると、銀行は、膨大な預かり資産と、損をさせられた経験がない大量の手つかずの顧客を抱えている宝の山だ。投資信託の販売はまだまだ伸びるだろう。

 だが、投資信託の銀行窓販に、いくつか問題点が見えてきた。

 最大の問題は、銀行が顧客の情報を持ち過ぎていて、セールス活動のうえで強過ぎることだ。

 銀行は、顧客の預金の種類別の残高や定期預金の満期などを知っている。

 また、それ以上の情報も集めようと思えば集められるだろう。たとえば、銀行員向けの雑誌には「証券会社から振り込みのあったお客様は、投資に興味がある可能性が大きいので、アプローチしてみよう」というようなことが書かれていた。

 通常、個人客は、証券会社には自分の金融資産のなかから、見せてもいいと思う一部を預けてあるだけだが、銀行にはおカネの「本体」を預けていることが多い。ものの本によると、証券会社のセールスが断られる際にいちばん多い顧客の台詞は「今、おカネがない」なのだそうだが、銀行が相手だとこの理由は使えない。

 企業に対する融資では、与信に必要な情報を得るために銀行が顧客の口座の資金の動きを見ることはあってもいいと思うが、個人客に対する金融商品のセールスにこうした情報をどの程度使っていいのかについては、なんらかの制限が必要かもしれない。