『インベスターZ』をはじめ、『エンゼルバンク』や『砂の栄冠』など「お金」がキーとなるマンガを多く手がけている三田紀房氏。三田氏は「お金」についてどう考えているのか?
最終回である今回は、ずばり「どうやったらお金持ちになれるのか?」について伺った。返ってきた答えはシンプルで本質的なものだった。
聞き手・編集:竹村俊介(ダイヤモンド社)、写真:宇佐見利明
「儲けたい」と思わない限り、儲からない
――お金のマンガを数多くやられているということで、三田さんなりの「儲けの極意」を教えてほしいのですが……。
三田 でも、「儲けたい」「お金が欲しい」って思わない限り儲からないし、お金は集まらないですよ。思った人にしかお金は行かないので。思わない人には一生来ないですね。
――じゃあ、ほとんどの人は「儲けたい」と本気で思ってないと。
三田 そうですね。「儲けたい」なんて言うと、まわりから反発食らうんで、みんな黙ってる。「そんなこと言っちゃいけないのかな」って、道徳的に自分でブロックしてしまう。でも、そういう人には一生お金は来ないですよね。お給料以外には来ない。人から与えられるものしか来ないんです。
――じゃあ、ほとんどの人は「お金あればうれしいけど……」くらいにしか考えてないから、お金は一向に増えないと。
三田 まぁそういうことです。それはもうわかりきったことですよね。「お金が欲しい」「お金持ちになりたい」と思わない限り、お金持ちにはなれない。親の遺産でも入ってこないかぎりは。
――なるほど、まず意志ですよね。ところで三田さんは、以前「マンガって、単行本の儲けは大したことないんだよ」って仰っていました。どういう意味なんでしょうか?
三田 単行本の印税って一過性のものなんですね。たとえば1000万部売れたとしても、せいぜい持って4~5年ですよ。というのも税金の存在があるから。一気にドバーンとお金が入ってきても「3年前まで貧乏でした」って言えば、そう「みなして」課税してくれる。ただ、4~5年経つと、その所得そのものに対して税金が来るんで、そこからガバッと引かれちゃう。(編集部注:印税などで急に所得が増えた場合でも、その増えた部分を「5年間で受け取った金額」とみなして税金が計算される。変動所得に対して適応される平均課税制度のこと。)
だから、意外と儲かってる期間って短いんです。
――夢の「一攫千金」は、そこまでおいしくない……。
三田 なので、そこからどうやってそれを1回転、2回転、3回転させていくか。1つの資金を2回転、3回転させて増やしていく方法を取らない限り、ずっと儲けるというのは難しい。
20代で億万長者になったのに、50代の今、すごく悲惨なマンガ家って、実はいっぱいいますよ。大切なのは「どうやって、最初の資金を回転させるか」「なるべく長く、ずっと回り続けるようにするか」っていうことをきちっとオペレーション立てておくこと。
『ドラゴン桜』も「単行本が売れました」で終わりにしてはいけないんです。そのあとに、英語の参考書とか、ドリルとか、いっぱい出してるんですよ。
――いまだに出てますよね。
三田 そうすると、そういうものはずっと売れる。関連商品は売れ続けるんで、何もしなくても、それに対する印税は入ってくる。つまり「長く続く価値をどうやって作るか」「モノが回転していくオペレーションをどう立てるか」っていうことが大事なんですよ。