今「がん」に関する情報があふれています。芸能人でもがんを公表する人がいるため、ある意味、よく聞く病気になりました。しかし、情報があふれているゆえに、本当に正しい情報はなんなのか……迷う人が多いのも事実です。
そこで、がん患者さんに日々接している現役の国立病院の内野三菜子医師が、がんの主治医に聞きにくいようなことや、知っておいたほうがいいことなどを解説した本『身近な人ががんになったときに役立つ知識76』を発売。この連載では、その本の中から気になるところを紹介していきます。
なぜ「5年生存率」を
がんの治療現場で使うのか?
東京都出身。国立国際医療研究センター国府台病院 放射線治療室長。聖マリアンナ医科大学放射線科、埼玉医科大学国際医療センター放射線腫瘍科を経て、カナダ・トロントのプリンセスマーガレット病院放射線腫瘍科にて、日本人初のクリニカルフェローとなる。並行してトロント大学オンタリオ教育研究所(大学院)医学教育学にて修士号取得。帰国後、国立国際医療研究センター病院を経て、現職。日本医学放射線学会専門医(放射線治療)、がん治療認定医
Q 「5年生存率50%」って、どんな意味?
「がんの5年生存率」は、がんと診断されてから5年後にどれくらいの人が生きているかを示しています。具体的には「5年生存率50%」と言うと、ある時点でがんと診断された人が100人いたとして、そのうちの50人が5年後にも生きて集まれる、ということです。
生存率は、診断からの期間によって異なり、がんの種類や調査目的に応じて、1年、2年、3年、5年、10年で比較する方法があります。その中で、がんの治療で使われることが多いのが「5年生存率」です。
がんは、見つかって治療をしてから2~3年以内に再発することが多く、5年を過ぎても再発や転移がなければ、治療や経過観察を一区切りできる目安となっているからです(乳がんや前立腺がんなどの場合は長期間経過してからの再発も多いので10年を目安にしています)。
全体的な日本人のがんの5年生存率は、医学の進歩により、徐々に改善されてきています。「がんの統計’15」(がん研究振興財団)によるとすべての部位やステージの生存率の平均は、1997年の62.0%から、2015年は68.8%まで伸びています。がんの告知をされたからといって、すぐに死をイメージする必要はないのです。