Photo by Toshiaki Usami
苦境にあえぐ中小証券会社の廃業や再編が本格化している。
2011年2月、東京・兜町に本拠を構える大成証券が自主廃業、創業82年の歴史に幕を閉じた。同じく老舗の金十証券もすでに対面の証券営業部門の分割譲渡をすませ、3月にも廃業する。
統廃合も相次いでいる。旧野村證券系列のいちよし証券は10年4月以降、和歌山県の環証券、長野県の飯田証券、長崎県の佐世保証券を次々に吸収合併。来年5月には大阪府の岩井証券とコスモ証券の2社も合併する見込みだ。
それでなくても中小証券の業績は厳しかった。株式市況の長期低迷によって、収益の柱である株式委託手数料収入が大きく減少していたからだ。10年度中間期に至っては、日本証券業協会の会員である国内証券269社のうち、じつに67%の181社が経常赤字を余儀なくされた。
さらに追い打ちをかけているのが、10年1月から稼働した東京証券取引所の新売買システム「アローヘッド」の登場だ。これにより、会社の自己資金で株式売買を行うディーリング業務でも、収益を稼げない中小証券が増えているというのだ。
アローヘッドはこれまでの600倍の速度、ミリ秒単位で売買注文処理が可能な高速システム。そのため、「取引が速過ぎ、かつてと同じ手法では利益を出せず、稼げなくなったディーラーが続出している」(中小証券のディーリング部長)というわけだ。
株式委託手数料収入が先細る一方の中小証券はここ2~3年、軒並みディーリング業務に経営資源をシフトしてきた。なかには「収益の7割を稼ぐ」と意気込んでいたところもあったほど。それだけに、ここでも収益を稼げないとなれば淘汰は必至で、「あと十数社が廃業を控えている」(業界関係者)。
すでにディーリング業務から撤退する中小証券も数社出てきており、まさに行き場を失った中小証券の店じまいは、しばらく続きそうだ。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 池田光史)