「緊縮財政の弊害」が明らかになってきた

こうした一連の流れのなかで、IMF(国際通貨基金)などでも「南欧諸国に緊縮的な財政政策を課したことは誤りだったのではないか」といったことが議論されるようになり、少しずつこれまでの過ちが認識されていった。

財政改善を目的として2010年に増税を先行させた英国では、成長率が落ち込んで税収が伸び悩んだ結果、かえって財政収支の改善に時間がかかった。米国でもオバマ政権による増税策がとられていたが、日銀やECBよりもはるかに強力な金融緩和をFRBが主導していたため、税収が著しく増えて財政収支は大きく改善した。ただし、その米国にあっても、経済成長率が十分に高まることはなかった。

この結果、「低成長下での抑制的な財政政策をとるのは誤りだ」という認識がかなり浸透し、拡張的な財政政策への再評価がはじまることになったのである。たとえば、米国財務長官やハーバード大学学長を務めた経済学者ローレンス・サマーズが2013年のIMF年次会議で語った「先進諸国が長期停滞(Secular Stagnation)に陥っている」という言葉も、そうした文脈のなかで理解する必要があるだろう。

一方、日本の経済メディアは、経済学の世界的権威によるこの発言に飛びつき、日本経済の低迷状態に「お墨付き」を得たかのような報道をしていた。挙げ句の果てには、さらに、「こうした閉塞状況は世界的なトレンドであり、『日本化現象』である」などの解説も見られる。ただ、20年以上もデフレが続いているのは日本だけであり、その異常さを軽視したこうした評価に、私は首をかしげざるを得ない。

サマーズが長期停滞論を唱えていたのは事実だが、一方で彼が同時に論じていたのは、「その仮説が正しいとすれば、この状況を放置せず、必要な政策を行うべきだ」ということにほかならない。つまり、サマーズの長期停滞論は、単なる現状追認などではないのである。