特定層に「大人気」の国債暴落論だが…

多くの人が「金利上昇」というときに考えるのが、いわゆる国債暴落による急激な金利上昇だろう。国債暴落論は、一部の論者がメディアで長年にわたり警鐘を鳴らしていることもあり、一定層の固定ファンを持つ「人気コンテンツ」になっているような感がある。

私が一般の方向けに講演の機会をいただく際にも、最後には決まってこの種の質問を頂戴する。とくに、老後のために多くの金融資産を保有している方ほど、「財政破綻」「国債暴落」「円急落」といったテーマの本や記事を読んで、この危機シナリオをたくさん勉強されており、あれこれと真剣に心配されている印象だ。

これらの議論の根本にあるのは、財政状況に対する懸念である。たしかに、日本の財政赤字や公的債務残高が膨らんでいることは事実だ。私が普段接している金融関係者たちのなかにも、「国債暴落? そんな可能性はまずないよ!!などと言いながらも、心のどこかでは不安を抱いている人がけっこう多い。とはいえ、彼らも明確なロジックを持っているわけではなく、いろいろな場面で各方面から危機シナリオを何度も聞かされるうちに、「いまは大丈夫だが…いつかはひょっとすると、ひょっとするかもしれないな……」と感じているに過ぎない。

「日本はすでに財政破綻寸前の状態にあり、今後、国による国債償還(返済)が滞ったりすれば、国債価格が大暴落、急激な金利上昇が起きる可能性がある」というのがその大枠のストーリーである。

さらに、日銀が大量に国債を買い入れる「異次元の金融緩和」がはじまって以来は、「これ以上の金融緩和を続けていると、突然、急激な金利上昇・円安・インフレ加速などが訪れる。すると、ハイパーインフレによって預金が紙くず同然になり、金融機関が預金封鎖を行うため、私たち日本人は資産を失って路頭に迷う」というシナリオが一部でコアな人気を保っているようだ。