不動産のアベノミクス相場、再来は?
持ち家やマンションをどのタイミングでどれくらいの価格で購入するかは、個人の人生設計上、大きなイベントである。日本銀行の政策フレームワークを踏まえると、景気回復が続きインフレ率が上昇しても、長期金利はきわめてゆっくりとしか上昇しないとお伝えしたが、低金利のうちに住宅購入検討したい人もいるかもしれない。
また、インフレ期待が高まるなかで、一部では「サラリーマン大家さんブーム」が再燃し、不動産投資はじめる人も増えている。物件の追加購入を検討するにしても、ある時点での売却を考えるにしても、不動産価格の動向が気になる人も多いのではないだろうか?
アベノミクスが発動した2013年以降、株価上昇に遅れるかたちで、不動産価格の上昇が続き、それが経済メディアを賑わしていた。とはいえ、価格上昇が見られたのは、東京・大阪などの都市部・商業地の地価、そしてマンション価格などに限られる。住宅を含めた全国の地価(基準地価7月1日時点)は、2013年から2016年までずっと対前年比でマイナス、つまりわずかながら下落が続いているのが実情なのだ。
一方、都市と地方とでは地価の状況はまったく異なり、東京圏の住宅地の地価は2014年以降、3年連続で上昇している。とはいえ、各年の上昇率はいずれも0.5%程度に過ぎず、この住宅価格上昇を支えているのは、投資対象となっているハイスペック・マンションなどの高額物件である。株高などによって拡大した家計や企業の金融資産が、これらの物件に流入しているということだ。
そのため、2015年夏場をピークに日本の株式市場で下落局面が続くと、不動産市況にも陰りが見えはじめた。さらに、タワーマンション高層階の購入による抜け穴的節税策について、税務当局が対応措置を講じると、一部でミニブーム的に活況を呈してきた不動産価格も2016年に入ってピークアウトした。